離婚を検討している、あるいは離婚後の年金について考える方にとって「3号分割」は重要な制度です。しかし、「結婚中、家事や育児を全くしていなかったとしても適用されるのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。この記事では、3号分割の仕組みとその適用条件について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。
3号分割制度とは?
3号分割とは、夫婦が離婚した際に、専業主婦(第3号被保険者)だった配偶者が、配偶者(主に会社員や公務員)の厚生年金記録の一部を受け取れる制度です。2008年4月1日以降の期間が対象で、自動的に年金記録を分割できるようになりました。
この制度は「婚姻期間中に扶養されていたかどうか」がポイントで、家事や育児を実際に行っていたかどうかは要件に含まれていません。
3号分割の対象となる人の条件
3号分割の対象となるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 離婚していること
- 婚姻中に第3号被保険者であった期間があること
- 分割の請求を離婚後2年以内に行うこと
つまり、配偶者の扶養に入っていたかどうかが重要な基準となっており、実際にどのような生活をしていたか(専業主婦的な業務をしていたかどうか)は関係ありません。
専業主婦業をしていなかった場合でも適用される理由
たとえ家事や育児などの「いわゆる主婦業」を行っていなかったとしても、年金制度上では扶養に入っていた事実が重要です。第3号被保険者は保険料を納めずに年金がカウントされる制度であり、その背景にあるのは「配偶者がその負担をしている」という考え方です。
極端な例として、結婚中まったく家計にも関与せず別居状態だったとしても、扶養に入っていた記録があれば3号分割は成立します。
実際にどれくらい年金が増えるのか?
分割されるのは配偶者の厚生年金の保険料納付記録であり、金額に換算すると数千円から数万円の年金増額につながることがあります。
たとえば、元夫が年収500万円の会社員で10年分の厚生年金があった場合、その記録の半分が分割対象となり、将来的に月額数千円から1万円前後の年金上乗せになるケースも。
3号分割の手続きと注意点
手続きは年金事務所で行い、年金分割請求書と戸籍謄本、離婚届受理証明書などが必要です。離婚成立後2年以内に手続きをしないと権利を失いますので注意が必要です。
また、3号分割はあくまで自動的に配偶者の記録を分ける制度であり、相手の同意は不要です(合意分割とは異なる点に注意)。
まとめ:実際の生活実態よりも制度上の記録が重要
3号分割は、実際に主婦業をしていたかどうかではなく、制度上「第3号被保険者」であったかどうかで判断されます。したがって、専業主婦の業務を一切行っていなかった場合でも、対象となる可能性が十分にあります。
将来の年金額に直結する制度ですので、離婚後は速やかに年金事務所に相談し、必要な手続きを進めましょう。