遺言書は相続において重要な法的文書ですが、複数存在する場合や内容に差異がある場合、どれが有効かで混乱が生じることがあります。特に公正証書遺言のように公証役場で作成された遺言書については、正しい知識が必要です。本記事では、公正証書遺言が2通以上あるケースや有効性の判断基準、トラブル防止の対策について詳しく解説します。
公正証書遺言とは何か?
公正証書遺言とは、公証人が作成・保管する公的な遺言書の形式です。作成には証人2名の立ち会いが必要で、内容の正確性や保存性の高さから、もっとも信頼性の高い遺言形式とされています。
家庭裁判所の検認が不要で、被相続人の死後すぐに遺言の執行が可能というメリットがあります。
複数の遺言書が存在することはある?
実際に、遺言者が心変わりをしたり事情が変わったことで、複数の遺言書が作成されているケースは珍しくありません。たとえば以下のようなパターンが考えられます。
- 公正証書遺言と自筆証書遺言の両方がある
- 公正証書遺言が2通以上存在する
- 同日付で内容が異なる遺言書がある
このような場合、いずれが有効となるのかが重要です。
有効となるのは「最も新しい遺言書」
民法により、基本的に有効なのは「日付が最も新しい遺言書」です。つまり、後に作成された遺言書が前の内容を明示的または黙示的に撤回したとみなされます。
ただし、最新の遺言書の形式に不備がある場合(たとえば署名がないなど)、無効になる可能性もあるため、遺言の形式面も非常に重要です。
トラブルの背景と注意点
複数の遺言書がある背景には、家族関係の変化や遺言者と相続人との関係悪化などがあることが多く、「いざこざの種」になることも少なくありません。
例えば「長男には財産を与えない」と明記した遺言書の後に、「すべての子に平等に分ける」とした新たな遺言書が出てくることで、相続人間に不信感が生まれるケースがあります。
トラブルを防ぐためにできること
- 最新の遺言書を作成する際は、古い遺言書を明確に「撤回する」旨を明記する
- 家族に遺言の存在を伝え、相続争いを未然に防ぐ
- 内容変更の必要がある際は、必ず専門家(弁護士や司法書士)に相談して形式を整える
また、公正証書遺言の写しは本人だけでなく、遺言執行者や信頼できる家族に預けておくと安心です。
まとめ:遺言は「最終意思」であるがゆえに丁寧に
遺言書は遺された人々にとって法的・精神的に重い意味を持ちます。公正証書遺言が複数ある場合は、原則として最も新しいものが有効ですが、内容や形式、作成経緯も重要です。遺言者の意思が正しく伝わり、相続人間の争いを回避するためにも、制度やルールを正しく理解し、専門家の助言を受けながら対応していくことが大切です。