ドラマや小説でよく見かける「お前はもう勘当だ!」「今日限りで親子の縁を切る!」というセリフ。一見、深い決意や感情の断絶を表しているように感じられますが、実際の法律ではどのように扱われているのでしょうか?この記事では、「勘当」や「絶縁」という概念が法的にどのような意味を持つのか、家族関係や相続などに与える影響を詳しく解説します。
勘当・絶縁とは何か?
「勘当」や「絶縁」とは、親が子や家族間で関係を断つという意思表示を表す言葉です。これは主に感情的・社会的な意味合いが強く、法律上の手続きではありません。たとえば、口頭や手紙で「絶縁だ」と伝えたとしても、法律上の親子関係がなくなるわけではありません。
実例として、親が「もう息子とは会わない」と宣言しても、戸籍上の親子関係はそのままであり、扶養義務や相続権は原則として存続します。
法律上、親子関係は戸籍によって定まる
日本の法律では、親子関係は「戸籍」によって公的に証明されます。一方的な「勘当」宣言では戸籍が変更されることはなく、親子としての法的地位も維持されます。親が子を勘当したとしても、戸籍を除籍するような制度は存在しません。
つまり、どんなに関係を断ち切りたいと思っても、それは私的な感情の範囲にとどまり、法的な効力は発生しません。
相続の観点から見た「勘当」
親子関係が続いている限り、子には親の財産を受け取る「法定相続人」としての権利があります。「勘当したから財産は渡らない」と一方的に言っても、遺言などの法的手続きを取らない限り、子は相続権を持ち続けます。
親が本当に財産を渡したくない場合は、公正証書遺言などで相続させない旨を明記する必要がありますが、それでも「遺留分」という最低限の権利は保証されるケースもあります。
扶養義務と「絶縁」
民法第877条によれば、直系血族や兄弟姉妹には扶養義務があります。たとえ勘当されたとしても、親が生活に困窮した場合、子には扶養義務が課される可能性があります。逆に、親が子を扶養する義務も同様にあります。
したがって、「絶縁」したからといって法的義務が免除されるわけではないという点に注意が必要です。
法的に縁を切る方法はあるのか?
実質的に「縁を切る」方法としては、「養子縁組の解消」や「家庭裁判所を通じた扶養免除の申立て」など、限られたケースで可能な手続きもあります。ただし、実の親子関係を完全に解消する法制度は基本的には存在しません。
例えば、親が子と絶縁したい場合でも、法的に親子関係を解消する手段は現実的には用意されていないというのが現状です。
まとめ:勘当や絶縁はあくまで感情的・社会的な行為
結論として、「勘当」や「絶縁」は法律上の効力を持つものではなく、親子の戸籍や相続権、扶養義務には影響を与えません。これらを法的に整理したい場合には、適切な手続きと専門家のアドバイスが必要になります。
感情のもつれが法律に影響するわけではないことを理解し、家族関係のトラブルは慎重に、必要なら弁護士や司法書士と相談しながら進めましょう。