家族関係が複雑な場合、介護や扶養といった問題は、精神的・法的にも大きな負担となります。特に養子縁組をしていても長年連絡を取っていない場合、その義務の範囲に戸惑う人も多いはずです。本記事では、養子と養親の関係性における介護義務の考え方を法律と現実の両面から整理します。
養子と養親の法的な扶養義務について
民法第877条では「直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養の義務を負う」と定められています。養子縁組をしている場合、養子と養親の関係は戸籍上も法律上も実の親子と同等です。
したがって、養父母に対しても扶養義務が生じる可能性はあります。しかし、これは一律に義務が課せられるわけではなく、双方の生活状況や経済状況、過去の関係性などを総合的に考慮して判断されます。
長年音信不通である場合の対応はどうすべきか?
20年以上音信不通であるという事実は、扶養義務の判断に大きく影響します。例えば家庭裁判所で扶養の可否を争うような場合、過去の関係性や実質的な親子関係があったかが重視されます。
また、自治体から扶養照会が来た際には、その旨を正直に記載して返答することが重要です。「連絡を取っておらず、経済的・精神的に支援は困難である」と記載すれば、それ以上の強制は通常ありません。
養父に兄弟がいる場合の介護責任は?
養父に実の兄弟姉妹がいる場合、彼らにも扶養義務がある可能性があります。家族内の話し合いで介護分担を検討することが望ましいですが、法的に誰にどの程度の責任があるかは家庭裁判所が判断する領域です。
もし養父の兄弟が介護や生活支援を拒否している場合でも、あなたが全責任を背負う必要があるとは限りません。福祉サービスや成年後見制度などの利用も視野に入れましょう。
伝え方のポイント:介護が困難である旨をどう伝えるか
養父の兄弟や福祉関係者に対して「介護できない」と伝える際には、感情的ではなく客観的な事実として説明することが重要です。例として「20年以上連絡がなく、介護体制も整っていない」「現在、実母の介護で手一杯である」など、事情を明確に伝えましょう。
その際、手紙やメールなどの書面で伝えると記録としても残り、誤解が生じにくくなります。
公的サービスや相談窓口を活用しよう
困ったときは、一人で抱え込まずに公的機関を活用するのが賢明です。地域包括支援センター、市町村の福祉課、または法テラスなどでは、介護に関する相談や法的な助言を無料で受けることができます。
養子であることや家族関係に不安がある場合も、専門家に相談することで、法的根拠に基づいた対応が可能になります。
まとめ:養子でも関係性が薄ければ介護義務は柔軟に判断される
養子であるという法的な立場があっても、長年の音信不通や実質的な関係の有無は、扶養義務や介護責任において大きく影響します。すぐに介護を引き受ける必要はなく、冷静に状況を整理し、必要に応じて公的機関や法律相談を活用することが大切です。
感情的な問題ではなく、制度的な対応が求められる場面ですので、無理をせず、正しい情報と助言に基づいて判断するようにしましょう。