差し止め請求の立証責任は誰にあるのか?裁判で問われる根拠と実務のポイント

知的財産権侵害や名誉毀損、プライバシー侵害などを理由に「差し止め請求」が行われるケースは少なくありません。しかし、実際に差し止めが認められるかどうかは、立証責任の所在が大きく影響します。本記事では、差し止め請求における立証責任の基本的な考え方と、実務上の注意点について詳しく解説します。

差し止め請求とは何か?

差し止め請求とは、不法行為や権利侵害にあたる行為を将来にわたって継続・再発させないように、加害者に行為の中止を求める民事上の請求です。

たとえば、著作権侵害の投稿をSNSで繰り返された場合に、その行為の中止と再発防止を求めて訴訟を起こすようなケースがこれにあたります。

立証責任の原則的な考え方

民事訴訟では「請求する側」が自己の主張を裏付けるための立証責任を負います。したがって、差し止め請求を行う原告側は、次のような要素を証明する必要があります。

  • 相手方による違法な行為が現に存在すること
  • その行為により自己の権利が侵害されていること
  • 将来的にもその侵害行為が継続・再発するおそれがあること

これらを疎明できなければ、裁判所は差し止め請求を認めません。

侵害行為の違法性と因果関係の立証

たとえば、ネット上の投稿により名誉が毀損された場合には、「社会的評価を低下させる内容が書かれており、それが真実でない、または公益性がない」といった点を具体的に立証する必要があります。

また、投稿内容と名誉毀損という結果との間に因果関係があることも示さなければなりません。

差し止めの必要性:将来の危険の立証がカギ

差し止め請求が単なる「事後対応」ではなく、「将来の侵害防止措置」であることから、再度同様の行為が繰り返される蓋然性を原告が主張・立証することが求められます。

たとえば、過去にも複数回同様の投稿がされていた記録や、加害者が反省していない旨の発言などがあれば、有力な証拠になります。

例外的に立証責任が転換されることも

一定の状況下では、立証責任が被告側に転換される場合もあります。たとえば、企業秘密や営業妨害のように、侵害の事実を原告側が客観的に把握しにくいケースでは、相手方が合理的な説明を行う責任を課される場合があります。

これは裁判所の裁量による部分が大きく、証拠のバランスや当事者の主張の態様により判断されます。

まとめ:差し止め請求では原告の立証が重要なカギ

差し止め請求を成功させるには、「違法行為の存在」「自己権利の侵害」「再発の蓋然性」という三点を具体的かつ説得力のある形で立証する必要があります。

実務上は、事前の証拠収集と主張構成が非常に重要です。差し止め請求を検討している場合は、早い段階から法律専門家に相談し、立証戦略を練ることを強くおすすめします。

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