法人の銀行口座と責任問題:代表辞任後も責任を問われる可能性とは

法人の銀行口座の開設・管理に関わった人物が、後に代表を辞任した場合でも、一定の条件下では責任を問われる可能性があります。特に、名義や取引責任者が変更されていない場合、思わぬトラブルに巻き込まれることも。本記事では、実例を交えて法的な観点から解説します。

銀行口座の取引責任者とは何か

法人名義の銀行口座では、「代表者」とは別に、実際の口座管理を担う人物として「取引責任者」や「届出担当者」を設定するケースがあります。金融機関においては、この人物が入出金の実務を行う上での窓口となります。

そのため、会社の代表を退いたとしても、銀行に「取引責任者」の変更届を提出していなければ、依然として名目上の責任を負う立場に置かれ続ける可能性があるのです。

不法行為と犯罪収益移転防止法の関係

仮にその口座が「不法行為に基づく収益の受け皿」として使われていた場合、犯罪収益移転防止法や詐欺罪などが適用される余地があります。この法律は、不正な資金の流れを防止するために設けられたもので、単に「知らなかった」では免責されないこともあるため注意が必要です。

例えば、旧代表者Aが名義上の取引責任者として残っていた場合、たとえ実質的に関与していなかったとしても、当局が調査対象とする可能性があります。

過去の実例:代表辞任後の責任追及

過去には、ある法人で代表を辞任した元役員が、後任者によって行われた不正取引の一部について事情聴取を受けたケースもあります。理由は、銀行口座の「実質的な利用者」が不明であったため、口座開設時の名義人に遡って調査されたためです。

このような事例からも、辞任後に口座管理権限や取引責任を放棄した旨を、しっかり記録や金融機関へ届け出しておくことが、トラブル防止に有効だとわかります。

代表辞任後にしておくべき対応

  • 銀行への名義変更と取引責任者の交代手続き
  • 法人登記簿の代表者変更手続き
  • 引継書や辞任届など、法的証明として残せる書類の整備
  • 可能であれば弁護士を通じた文書記録

これらの対応を怠ると、あとになって関与を疑われたり、誤解により捜査対象となってしまうリスクがあります。

まとめ:口座の名義と責任は切り離せない

法人においては、代表辞任後であっても「名義」や「記録」が残っている限り、一定の責任を問われる余地があります。銀行口座に関する管理責任や名義変更手続きは、退任時の重要な業務の一部です。

実質的支配者が他人であっても、関係書類や口座管理情報の更新を怠っていれば、責任の所在が不明確となり、後の法的トラブルにつながる可能性があります。心当たりのある方は、早めに金融機関や法律の専門家へ相談しましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール