近年、SNSでの晒し(いわゆる「拡散」)による名誉毀損や精神的被害が社会問題化しています。個人間のトラブルであっても、晒し行為は法律に抵触することがあり、放置すると深刻な精神的・社会的影響を受けることもあります。この記事では、SNS上での晒しや嫌がらせが法的にどう扱われるか、そしてどのような対処が可能かを解説します。
SNSでの晒し行為は何罪にあたる可能性があるか
まず、SNSにおける「晒し行為」が刑法や民法上の違法行為に該当するかどうかを見ていきます。代表的な該当罪名には以下があります。
- 名誉毀損罪(刑法230条):公然と事実を摘示して他人の社会的評価を低下させる行為
- 侮辱罪(刑法231条):具体的な事実を挙げずとも公然と他人を侮辱する言動
- 脅迫罪(刑法222条):相手に対して害を加える旨の告知で恐怖心を与えた場合
- 威力業務妨害罪(刑法234条):業務を妨害するようなネット上の大量投稿や晒し行為
これらは被害者の受けた精神的影響や、拡散の程度によって違法性の判断が変わります。
民事上の損害賠償請求ができる可能性
刑事罰と並行して、民事上の慰謝料請求も可能です。民法709条に基づく不法行為責任として、精神的損害に対して損害賠償を請求することができます。
例えば、SNSで精神疾患を抱えることが明示されている人物に対し、煽るような投稿や脅迫的表現を用いた場合、それが原因で症状が悪化したとすれば、加害者側の責任が認められる可能性が高まります。
弁護士を通じた法的措置とは?
もし弁護士に依頼した場合、以下のような対応が検討されます。
- 加害者に対する内容証明郵便の送付(謝罪要求、投稿削除要求、接触禁止など)
- 損害賠償請求訴訟(示談交渉が不成立の場合)
- 発信者情報開示請求(匿名アカウントの場合)
弁護士が介入することで、相手の行動が一気にトーンダウンすることも少なくありません。
被害届の提出とその効果について
警察に被害届を出すことは可能ですが、実際に受理されるかどうかは被害の内容と証拠の強さによります。以下がポイントです。
- SNS投稿のスクリーンショットや保存を行っておく
- 精神的苦痛や体調悪化の診断書があると有利
- 複数人への晒し行為や継続性があれば、悪質性が高いと判断されやすい
被害届は捜査開始の一歩ですが、実際に捜査が動くのはハードルが高めである点に注意が必要です。
精神疾患がある場合の法的リスクと保護のポイント
精神疾患(うつ病など)を患っている方が晒し行為にさらされた場合、被害の深刻度が高く評価される可能性があります。特に自殺念慮や症状の悪化が発生している場合、加害者側の責任は非常に重くなります。
一方で、反応として過度な表現や脅しと受け取られるような言動をしてしまうと、逆に不利になる可能性もあるため、第三者(弁護士やカウンセラー)を交えた対応が望ましいです。
まとめ|晒し被害にあったとき、まずとるべき行動
SNSでの晒し被害にあった場合、まずは冷静に証拠を保存し、感情的なやり取りを控えることが重要です。そして、法的対応としては以下の順序が一般的です。
- 証拠の収集(投稿、DM、反応など)
- 心身の記録(診断書、日記など)
- 弁護士や法テラスへの相談
- 必要に応じて民事訴訟や刑事告訴を検討
一人で抱え込まず、専門家と連携して自分の尊厳と安全を守る行動を始めましょう。