現代のSNSや口コミ文化では、発言の責任が問われる場面が増えています。誹謗中傷が問題視される一方で、「根拠のない褒め言葉」はどうなのでしょうか。善意であっても、法的な問題を引き起こす可能性があるのか、具体例とともに解説します。
そもそも「根拠のない褒め言葉」とは何か?
「あの店は日本一おいしい!」「彼は世界で最も優れた研究者だ」など、感想や印象としての褒め言葉は日常的によく使われます。多くの場合、これは法律上問題になりません。
しかし、特定の利益や評価に結びつく場面、たとえば株価や商品の評判、業務評価に関連する褒め言葉になると、誤解や誤認を生む可能性が出てきます。
風説の流布に該当するケースとは?
「風説の流布」とは、上場企業の株価に影響を与える虚偽の情報を流す行為を指します。これは金融商品取引法第158条で禁止されています。
たとえば、「〇〇社は近く世界的企業と提携するらしい」といった虚偽のポジティブ情報が、株価を意図的に釣り上げる目的で流された場合、それが虚偽であれば罪に問われる可能性があります。
広告やPRの文言には注意が必要
商業的な場面での褒め言葉、つまり宣伝文や広告では、景品表示法が適用されます。「根拠のない過剰な表現」は不当表示に該当することがあり、行政指導や課徴金の対象になることも。
たとえば、「98%の人が効果を実感!」という表現を使う場合、実際にその数字を裏付けるデータがなければ違法とされる可能性があります。
SNSや口コミ投稿での褒め表現は?
個人の主観的な感想として書かれた褒め言葉は、基本的に表現の自由の範囲内です。ただし、ステマ(ステルスマーケティング)のように、広告であることを隠して褒める投稿をすると、消費者庁などからの指導対象になります。
例えば、報酬を受け取っているにもかかわらず、「自腹で買いました!」と嘘の好評価を書くと、法令違反にあたる場合があります。
個人間の褒め言葉が名誉毀損になることも?
一見無害に思える褒め言葉でも、第三者をおとしめる形で使われると、名誉毀損や侮辱に発展することもあります。たとえば、「〇〇さんと違って、彼は完璧だね」といった比較が他人を傷つけるケースです。
褒める対象を上げるために他人を貶める表現には注意が必要です。
まとめ:褒め言葉も「文脈」と「影響力」で判断される
根拠のない褒め言葉がすぐに違法になるわけではありませんが、それが経済的な影響や評価操作につながる場合、法律の対象となる可能性があります。
情報を発信する際は、「誰に向けて」「どんな影響を与えるか」という視点を持つことが重要です。誠実な言葉選びで、より信頼される発信者を目指しましょう。