車へのイタズラなどの器物損壊被害を受けたにもかかわらず、加害者が精神的な問題を抱えていたために十分な責任追及がされない——このようなケースは現実に存在します。本記事では、加害者に精神障害があった場合に、被害者が取れる法的手段や対応の選択肢をわかりやすく解説します。
精神障害者と刑事責任の関係
刑法第39条により、「心神喪失者」は罰せられず、「心神耗弱者」は刑が減軽されることになっています。これは加害者の責任能力の有無に基づいて判断されるものです。
たとえば、統合失調症や重度の知的障害などがある場合、精神鑑定の結果次第で不起訴や医療観察制度の対象になることがあります。つまり、刑事処分を受けず、医療施設での措置になることもありえます。
器物損壊罪とその流れ
器物損壊罪(刑法261条)は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される犯罪です。ただし、逮捕・起訴されるには証拠が必要で、被害届や告訴が出されることが前提です。
防犯カメラなどの証拠が他の案件で使用されている場合でも、個別の証拠が乏しければあなたの被害について立件が難しい場合もあります。
加害者が逮捕されたのに不起訴になる理由
「逮捕された=起訴される」ではありません。精神鑑定の結果、責任能力がないと判断されれば不起訴、または医療観察法に基づいた入院措置で終了します。結果として刑事罰は科されないことも。
また、軽微な犯罪であると検察が判断した場合、起訴猶予となるケースもあり、その際は家庭や施設に戻されることも多いです。
被害者が取れる民事手段
たとえ刑事で処罰されなくても、民事で損害賠償請求は可能です。ただし、加害者に財産がなく支払い能力がない場合は、実質的に回収は困難になります。
加害者が高齢者であれば、扶養義務者(家族など)に対して請求を検討する場合もあります。弁護士に相談することで、具体的な請求可能性を把握できます。
警察の対応と被害者支援制度
警察は「加害者の個人情報や処分結果」を原則として開示しませんが、事件の進捗について問い合わせることは可能です。また、各都道府県警には犯罪被害者支援室があり、精神的・経済的支援を相談できます。
被害届が受理されていれば、損害を証明する資料(修理費の領収書など)を基に、損害賠償請求や火災保険の適用を検討することもできます。
再犯リスクと予防策
一度自宅に戻された加害者が再び同様の行為をする可能性は否定できません。防犯カメラの設置や、地域の防犯ネットワークへの参加など、物理的・地域的な予防対策も必要です。
加えて、弁護士を通じて加害者またはその家族に対し「警告書」を送ることで、再犯への抑止効果を狙うことも可能です。
まとめ:泣き寝入りしないために知識と行動を
精神障害がある加害者に対しても、刑事・民事を含めたさまざまなアプローチがあります。すべての責任を免れるわけではありません。泣き寝入りせず、必要な情報収集と法的アドバイスを活用することが、安心な生活を取り戻す第一歩です。