不貞行為による慰謝料請求において、証拠の有無は極めて重要な判断材料となります。とくに「自白書」しか存在しない場合、それがどこまで法的に有効な証拠とされるかが問題になります。本記事では、自白書の法的効力や証拠としての扱い、争う際の注意点について詳しく解説します。
自白書とは何か?
自白書とは、当事者本人が自発的に作成した「不貞行為を認めた書面」のことを指します。内容には性交渉の有無や回数、場所、期間、署名や押印などが含まれることが多いです。
これが手書きで本人の署名や押印があれば、裁判所において証拠能力を持つと判断されやすくなります。とくに「任意に書かれた」と認められる場合、その信用性は高く評価されます。
自白書だけで慰謝料請求は成立する?
基本的に、不貞慰謝料請求を認めてもらうには、「不貞の事実」と「配偶者に与えた精神的苦痛」を立証する必要があります。自白書はこの「不貞の事実」に対する有力な証拠にはなりますが、それ単独で確定的に認定されるかどうかはケースバイケースです。
たとえば自白書の内容が曖昧だったり、作成の経緯に問題がある(強要されたなど)場合、その証拠能力は低下します。一方で、他にLINEや写真、証言などが無くても、自白書の内容が具体的かつ信憑性が高ければ、裁判所はその内容をもとに不貞行為を認定する可能性もあります。
争うことは可能か?性交渉の有無を否定する余地
自白書に署名押印があったとしても、争うこと自体は可能です。「自白書を書いたのは事実だが、内容が事実とは異なる」、「当時精神的に追い詰められていて書かされた」などの主張が考えられます。
ただし、それを主張するにはその根拠となる事実や状況証拠が求められます。たとえば、同意なしに書かされた、虚偽の内容を書いた理由などが明確であれば、反証の余地があります。
裁判所の判断基準はどこにある?
裁判所は以下の観点から証拠の信憑性を判断します。
- 自白書の具体性(日時・場所・頻度の記載)
- 書かれた経緯(強要や誘導があったか)
- 他の補足的証拠の有無(LINE、目撃証言、領収書など)
- 当事者の供述の一貫性
特に「自筆」である点は証拠能力において有利に働きますが、それだけで確定するわけではなく、総合的な事情が考慮されます。
慰謝料請求に対して無視を続けた場合のリスク
請求書や内容証明の段階で無視し続けると、相手が訴訟を起こす可能性があります。その際、被告側が何も反論しなければ、裁判所は原告の主張を認めやすくなり、「欠席判決」によって敗訴するリスクがあります。
争う意思があるなら、内容証明や訴状が届いた時点で弁護士に相談のうえ、正式に反論することが重要です。
まとめ:自白書のみの慰謝料請求でも安心せずに慎重に対応を
不貞慰謝料請求において、自白書は一定の証拠能力を持ちますが、それだけで全てが決まるわけではありません。
- 自白書は具体性と任意性が判断のカギ
- 争う場合は「なぜ事実と違う内容を書いたのか」の説明が必要
- 訴訟になった際は必ず反論を準備する
- 弁護士のサポートを早期に受けることが、最良の防御策
安易に無視せず、法的な対応を検討することで、自身の立場を守ることが可能です。自白書がある場合でも、内容に不服があるなら、戦う道は十分に残されています。