飲食店などの小規模事業では、信頼関係に基づいた共同経営が多く見られます。しかし、その関係が悪化したとき、感情的な判断で関係を解消するとトラブルに発展するおそれがあります。この記事では、共同経営者に辞めてもらいたいと思ったときに、どのような法的手続きや配慮が必要かを解説します。
共同経営者とは「労働者」ではなく「共同出資者」であることが多い
まず確認したいのは、対象となる相手が「従業員」なのか「共同経営者」なのかという立場です。法人化していない飲食店では、出資や運営方針の決定に関与していれば共同経営者として扱われる可能性が高く、単なる「雇用契約」とは異なります。
この場合、いわゆる「解雇」とはならず、契約の解消や関係解消にはパートナーシップ契約の内容や、共同出資の分配についての合意が必要になります。
「辞めてほしい」と伝えることは一方的な解雇に当たるのか?
相手が「共同経営者」である場合、法律上の「解雇」とは異なり、「パートナーシップの解消」として扱われます。しかし、一方的に追い出すような形で関係を切ると、不当排除と判断され、損害賠償を請求されることがあります。
実際には、業務分担や出資割合、口頭でも合意されている運営方針などを元に、関係を解消するための交渉を行い、「離脱に関する合意書」や「清算書」を取り交わすことがトラブル防止になります。
問題となる言動やトラブルの記録は重要な材料に
過去のトラブル(逮捕歴、発言、勤務態度など)が関係解消の理由である場合、それらを記録・整理しておくことは非常に重要です。たとえば。
- 警察沙汰があった証拠(連絡内容や報道)
- 暴言や不適切な発言の記録
- 遅刻や業務怠慢の記録
これらは、感情ではなく「経営的な判断」で関係を解消したことを示すための裏付けとして有効です。
未払いの清算や契約書の整備でトラブルを回避
もともと知り合いだったり口頭で始めた経営の場合、お金の未払いがあいまいになりやすい点も要注意です。特に。
- 売上や利益分配の未払い
- 立て替えた経費の精算
- 共同購入した備品や設備の処理
などについては、「合意書」「清算書」といった文書を作成し、相手にも署名をもらうことで証拠が残ります。口約束だけでは法的保護は受けにくいため、書面による証拠化は必須です。
相手が従業員だった場合は「解雇」のルールが適用される
仮に相手が従業員扱い(給与制で、明確な雇用契約があった)だった場合は、法律上の「解雇」に該当します。この場合は。
- 解雇理由が客観的かつ合理的であること
- 就業規則に定めがあること
- 解雇予告もしくは30日分の手当の支払い
といったルールに従う必要があり、これを怠ると不当解雇と認定される可能性があります。
まとめ:感情だけでなく法的・実務的に準備を
共同経営者との関係を解消したいときは、感情的な対立だけで進めてしまうと、思わぬトラブルや損害賠償に発展するおそれがあります。過去の問題点や実績を整理し、冷静に書面で関係を整理することが、最終的な安心につながります。
弁護士などの専門家に相談して対応を整えることが、最善の結果に繋がる第一歩です。