街中で突然の暴力に巻き込まれる――そんな予期せぬトラブルが命に関わる重大な結果を招いた場合、法的にはどう扱われるのでしょうか。本記事では、通りすがりの人物との喧嘩が致死事件に発展したケースを例に、刑事責任の有無やその程度について解説します。
正当防衛と過剰防衛の違いとは?
刑法第36条では、自分や他人の身体・財産を不法な侵害から守る行為は「正当防衛」として違法性が阻却されると定められています。ただし、防衛行為が必要な限度を超えてしまうと「過剰防衛」として処罰対象になりうる点に注意が必要です。
たとえば、相手が拳で一発殴ってきた程度に対して、相手が倒れるまで殴打を続けるような行為は過剰防衛とみなされる可能性が高いです。
初犯であっても実刑になるケースとは?
日本の刑法では、過失や情状が考慮されたとしても「人が亡くなった」という事実は極めて重く見られます。初犯か否かだけでなく、以下のような事情が量刑に大きく影響します。
- 加害者側が挑発されたか、反撃としての行動だったか
- 暴力の程度と被害者の死亡との因果関係
- 事件後の対応(救命措置や自首の有無)
- 遺族への謝罪や賠償の有無
たとえ初犯でも、正当防衛と認められず、かつ命を奪ってしまった場合は、懲役3年以上の実刑判決が下る可能性は十分あります。
実例:通り魔的暴行から正当防衛を主張した事件
東京地裁平成22年の判例では、通行中に酔客に絡まれた被告人が反撃し、相手が転倒して死亡した事件で、過剰防衛が認定され執行猶予付き有罪判決が下されました。裁判所は「被告の対応には防衛の必要性があったが、力加減を誤った」と判断しています。
また、名古屋地裁平成30年のケースでは、初犯の被告が正当防衛を主張したものの、相手が既に戦意喪失状態だったことを理由に正当性が否定され、懲役5年の実刑判決が下されました。
警察や弁護士に伝えるべきポイント
万が一このような事態に巻き込まれた場合、自分の行動を正当防衛と認めてもらうには、次のような情報を迅速かつ正確に伝えることが重要です。
- 相手の攻撃内容(道具・回数・威力など)
- 自分の防衛行動の具体的内容
- 事件の経緯と、第三者の目撃証言
- 現場状況の写真や映像の有無
また、速やかに弁護士に連絡を取り、供述の方向性を一緒に確認することが極めて重要です。
まとめ:正当防衛が認められなければ初犯でも実刑の可能性は高い
通りすがりの人物に突然襲われた場合であっても、反撃の仕方やその結果によっては「過剰防衛」や「傷害致死」として実刑になる可能性があります。正当防衛が成立するには必要性・相当性・急迫性が揃っていることが重要です。
初犯かどうかは量刑判断の一要素に過ぎません。いざという時のために、法的な対応について知識を深めておくことが、自身を守る第一歩になります。