交通事故が発生した際、警察がどのように対応し、どのような思いを持っているのかについて、一般には知られていないことが多いものです。中には「死亡事故の方が処理が楽で、警察官は内心ありがたがっているのでは?」というような誤解や疑問もあります。この記事では、実務上の違いと警察官の実情について解説します。
交通事故の処理フロー:人身事故と死亡事故の違い
交通事故が起きた場合、警察は事故の態様に応じて現場検証や事情聴取、関係者の処理にあたります。人身事故では被害者が負傷しているため、病院への搬送手配や診断書の確認、加害者との処理調整が必要になります。
一方、死亡事故では死亡診断書・死体検案書の取得後に、司法解剖や実況見分が必要になるケースもあり、必ずしも処理が簡単とは言えません。
「死亡事故は処理が楽」は本当か?
一部では「死亡事故は処罰対象がはっきりする」「被害者が証言しないため調査が簡略化される」といった声もあります。しかし、実際には死亡事故は重過失致死罪など重大事件として扱われることも多く、捜査資料の作成量や監察対応などはむしろ多岐にわたります。
たとえば、被害者遺族への対応やマスコミ対策、検察との協議など、刑事責任追及のために詳細な証拠が求められ、精神的負荷も大きくなります。
警察官は「死亡事故がありがたい」と考えているのか
結論から言えば、そのような考えを持つ警察官は極めてまれです。大多数の警察官は市民の命を守ることが使命であり、死亡事故が起きれば「防げなかった悔しさ」を感じています。
警察学校でも、交通事故による死亡を一件でも減らすよう教育されており、死亡事故を軽視したり、歓迎するような姿勢は職業倫理に反するとされています。
誤解が広がる背景:一部の発言とネットの憶測
「死亡の方が処理が簡単」という話が独り歩きする背景には、過去に警察内部の冗談や不適切発言が報道されたことが影響しています。しかし、それは組織的な意図ではなく、個人の不見識によるものと考えられます。
また、ネット掲示板などでは、警察の対応に不満を持つ人が誤解をもとに発信するケースもあり、正確な情報と感情的な噂の区別が求められます。
現場の声:警察官の負担と責任
実際に交通課に勤める元警察官の声として「死亡事故は精神的に最もつらい」「遺族への説明や加害者の将来を考えながら動くのが本当に苦しい」という証言も多くあります。
行政処分や刑事処分の資料を整える手間、複数機関との連携などを踏まえても、死亡事故の方が“楽”という認識は誤りだといえるでしょう。
まとめ:命の重みと真摯な対応
交通事故処理において、警察官が死亡事故を「ありがたい」と考えることはありえません。むしろ、その責任の重さと命の尊さを受け止め、少しでも再発防止につながるよう日々努力しています。
私たちもまた、警察の行動を正しく理解し、噂や偏見に流されず、冷静に情報を受け取る姿勢が必要です。