家族の死後、遺産相続をめぐって思わぬトラブルが起きることがあります。特に「遺言書があるから安心」と思っていたのに、兄弟姉妹などから「遺留分がある」と主張された場合、戸惑う人も多いでしょう。この記事では、遺言書の効力と遺留分制度の関係について、わかりやすく解説します。
遺言書は法的に有効だが万能ではない
民法では、本人の意思を示す遺言書には基本的に法的効力があります。公正証書遺言や自筆証書遺言(要件を満たしている場合)は有効とされ、その内容に基づいて相続が行われます。
しかし、たとえ正式な遺言書であっても、他の法定相続人の権利である「遺留分」を侵害している場合は、その部分について争いが発生することがあります。
遺留分とは何か?
遺留分とは、法定相続人のうち配偶者・子・直系尊属が最低限相続できる財産の割合を指します。兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
たとえば、被相続人に子どもが3人いて1人にすべての財産を遺すと書かれていても、他の2人にはそれぞれ遺留分(法定相続分の1/2)を請求する権利があります。これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。
40年以上一緒に暮らしていた場合はどうなる?
被相続人と長年同居していたとしても、それだけで他の相続人の遺留分を排除できるわけではありません。ただし、その同居が介護や生活支援を伴っていた場合は、「寄与分」として考慮されることがあります。
寄与分とは、被相続人の財産形成や維持に特別な貢献があったと認められる場合、法定相続分より多く相続できる可能性を意味します。遺産分割協議や家庭裁判所で争うことになります。
遺言書と遺留分の関係性:どこまで守れる?
たとえば、「長男に土地を全て相続させる」と遺言書に書いてあっても、他の兄弟姉妹に遺留分がある場合、その分に相当する金銭を請求される可能性があります。
このような場合、土地を守るために現金で遺留分を渡すか、売却して分配する必要が出てくることもあります。
トラブルを避けるには?
- 遺言執行者を指定しておく
- 遺留分を考慮した遺言書を作成する
- 家族で生前から情報共有する
遺産相続において最も重要なのは「納得と事前準備」です。トラブルは、遺言の有無よりも、家族間の情報共有不足や誤解によって発生するケースがほとんどです。
まとめ:遺言書と遺留分は両立する
遺言書には一定の効力がありますが、それだけで遺留分を完全に排除することはできません。他の相続人が遺留分を主張すれば、一定の金額を渡す必要が出る可能性もあります。スムーズな相続を実現するためにも、遺言と共に家族の理解と納得を得る準備が欠かせません。