交通事故に巻き込まれた際、加害者が悪質な違反を重ねていた場合、その怒りや憤りからSNSに情報を投稿したくなるのは自然な感情です。しかし、映像や顔写真の公開には注意が必要です。被害者であっても、法律上のリスクや社会的なトラブルに発展する可能性があるため、冷静な対応が求められます。
SNSでの顔出し・映像公開は名誉毀損になる可能性がある
たとえ事実であっても、個人を特定できる情報をSNSで公開することは「名誉毀損罪」に該当する可能性があります。刑法第230条では、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合に処罰されると定められています。
特に「犯罪者である」「逮捕された」などの情報を発信する際、加害者が正式に有罪判決を受けていない段階では「無罪推定」の原則があるため、公開によって訴えられるリスクがあります。
プライバシー権と肖像権の侵害に該当する可能性も
事故の映像に加害者の顔がはっきり映っている場合、それを本人の許可なく公開することは「肖像権の侵害」に当たる場合があります。また、個人の情報が特定できる場合は「プライバシー権」の侵害とされることも。
たとえ外国人であっても、日本国内で生活していれば、日本の法律によって保護されるため、これらの権利は無視できません。
刑事責任と民事責任の違いを理解する
加害者がオーバーステイや飲酒運転などの重大な違法行為を犯していた場合、これは警察によって刑事処分の対象となります。すでに拘留されているということは、刑事事件として捜査が進んでいることを意味し、今後起訴・裁判・刑の執行、そして強制送還という流れが想定されます。
しかし、被害者による情報公開が違法であった場合、民事的に損害賠償を請求されたり、逆に名誉毀損で告訴される可能性もあるため注意が必要です。
感情よりも法的対処を優先することが大切
感情に任せてSNSに情報を投稿することは一時的なスッキリ感を得られるかもしれませんが、後々のトラブルや訴訟リスクを招くことがあります。特に被害者側が不利になるような展開は避けたいところです。
代わりに、警察への詳細な供述、弁護士への相談、被害届や告訴状の提出など、正規の法的手続きを通じて対応するのが望ましいです。
実例:SNS投稿が名誉毀損で逆に訴えられたケース
過去には、ストーカー被害者が加害者の顔写真と実名をSNSに投稿し、加害者側から名誉毀損で訴えられた判例があります。被害者は正当防衛を主張しましたが、裁判所は「公的機関の判断を待たずに一方的に情報を拡散した」として違法性を認定しました。
このように、事実であっても「公開の手段・範囲・タイミング」が不適切である場合、法的責任を問われることがあるのです。
まとめ:SNSでの公開は慎重に、まずは法的機関に相談を
オーバーステイや無免許運転など、重大な違反を犯した加害者に対しては、法的に厳しく対処すべきですが、その手段はあくまで正規のルートで行うべきです。SNSでの顔写真や映像の公開は、リスクを伴う行為であることを理解し、弁護士や警察などに相談するのが賢明な対応です。
感情に任せた投稿ではなく、冷静に事実を整理し、法律の力を正しく活用することで、真の解決へとつなげていきましょう。