交通事故の示談金における物損と人身の分離処理:車の時価額と慰謝料の支払いタイミング

交通事故に遭遇した際、「車の修理費(時価額)と通院に伴う慰謝料」は同時に支払われるのか、あるいは別々で処理されるのか、不安に思う方は少なくありません。特に全損扱いとなった場合は、保険金の支払いの流れが見えにくくなるため、この記事ではその整理と対処法を解説します。

交通事故における物損と人身の示談は原則別処理

交通事故においては物損(車の修理費や時価額)人身(治療費や慰謝料)の損害は、原則として別々に示談処理されるのが一般的です。物損は早期に金額確定が可能であるため、物損部分だけ先に示談・支払いが完了することもあります。

例として、全損と判断された車両に対して保険会社が50万円の時価額を提示した場合、その金額に納得すれば物損部分の示談が成立し、慰謝料の交渉が終わる前に先に振り込まれるケースが多いです。

人身部分の示談は「症状固定」後が基本

一方、むちうちなどのケガに関する損害賠償(通院慰謝料・休業損害など)は、治癒または症状固定と診断されてから本格的な金額交渉に入ります。これは、被害の全体像が明確になるのを待つためです。

そのため、症状が固定されるまでは人身示談は保留されることが多く、物損のように早期支払いは期待できません。

弁護士に依頼している場合の流れと支払い時期

弁護士が介入している場合、保険会社とのやり取りはすべて代理してもらえるため、基本的には次のような流れになります。

  • ① 車の全損評価(時価額)提示 → 同意であれば物損示談成立 → 支払い実行
  • ② 通院・治療終了後 → 診断書提出 → 慰謝料等の人身損害の請求開始
  • ③ 慰謝料・休業損害等の交渉 → 示談成立 → 最終的な人身損害の支払い

このため、物損部分の金額に争いがなければ、通院中であっても車の時価額分は先に支払われるのが通常です。

注意すべき示談タイミングとリスク

早期に物損部分の示談をしてしまうと、後から追加で費用請求(代車代・レッカー代等)が発生しても補償外となる可能性があります。そのため、全ての費用を確認したうえでの合意が望まれます。

また、人身と物損の両方をまとめて一括示談したいと考える方もいますが、長期通院になる場合は金銭的負担を避けるためにも、物損だけでも先に解決するのが一般的な手法です。

過去の判例・実例:別処理でスムーズに受け取った事例

実際に、あるケースでは車両の全損時価額として45万円が示談後すぐに支払われ、その後約4ヶ月間の通院終了後に慰謝料等が別途支払われました。このように、時価額と慰謝料は完全に別建てで処理されることが実務では一般的です。

まとめ:物損と人身の分離処理を理解して示談を進めよう

交通事故における車の全損による「時価額の支払い」と「通院慰謝料の支払い」は、別のタイミングで進行し、支払いも別途行われることが多いです。弁護士を通じて保険会社と交渉している場合、物損について早期に同意すれば、車両の支払いは人身示談よりも前に受け取れる可能性が高いです。

不安がある場合は、契約している弁護士に示談のタイミングや分離処理の意向を明確に伝え、適切な対応を進めましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール