高齢の親が認知症と診断されると、相続や会社経営に関する問題が一気に複雑化します。特に、家族内に強い影響力を持つ兄弟姉妹がいる場合、経済的な不均衡や信頼関係の崩壊が深刻なトラブルを引き起こす可能性も。本記事では、認知症の親を持つ場合における法的な備え方と実際に起こりやすいトラブル、そしてその対処法について具体的に解説します。
認知症の診断と法的能力の関係
認知症と診断されたからといって、すぐにすべての判断能力が否定されるわけではありません。民法上では「意思能力」が重要視されており、契約締結時点で意思能力を欠いていた場合にその契約が無効になる可能性があります。
しかし、これを証明するには医師の診断書や周囲の証言などが必要で、容易ではありません。親の判断力に疑念がある場合は、早めに法的措置を検討すべきです。
成年後見制度の利用を検討する
認知症の進行に伴い、財産管理や契約判断が困難になった場合は、「成年後見制度」の申立てを行うことが有効です。家庭裁判所に申し立てることで、後見人が財産の保全を行い、不当な契約や遺言変更を防ぐことができます。
実際に、遺言書の書き換えや不動産の名義変更が行われている状況では、後見制度による介入が早急に求められます。
遺言書の有効性をチェックする
認知症の状態で遺言が書き換えられた場合でも、その時点で十分な判断能力があれば有効とされます。ただし、判断能力が疑われる場合には無効主張が可能です。
重要なのは、遺言書作成時の状況証拠です。医師の診断書、弁護士や公証人の立ち合いの有無、内容の合理性などが無効性を争う際の鍵となります。
会社資産の私物化への対処法
会社名義の資産が個人に流用されている場合、会社の監査機能や株主総会などでその適正性を追及することが重要です。内部通報制度やコンプライアンス規定がある場合はそれを活用しましょう。
また、会計士・税理士による資産監査を依頼し、不正な資金移動が明らかになれば、会社法違反や背任罪に該当する可能性もあります。
感情的な対立から離れ、第三者の専門家を活用
家族間での感情のもつれが深くなっている場合、当事者同士では話し合いにならないことが多いです。弁護士や信頼できる第三者専門家に仲介を依頼し、冷静な法的対処を進めましょう。
特に、弁護士には家族信託や後見制度、株式の継承問題に精通した人を選ぶことが成功のカギです。
まとめ:まずは法的な安全網の構築を
親の認知症に伴う相続・会社経営問題は、個人では解決しきれないほど複雑です。早期に弁護士や司法書士と相談し、後見制度や監査の導入、遺言の精査などの対策を講じましょう。
焦らず、しかし迅速に、法的・倫理的に正当なアプローチをとることが、将来の争いを避ける最善の方法となります。