刑法に定められている「威力業務妨害罪」は、日常生活におけるトラブルや事件報道でも耳にすることの多い法律用語の一つです。しかし、「どのような行為が対象となるのか」「個人の私生活も該当するのか」など、曖昧な点も多く、正確な理解が必要です。本記事では、威力業務妨害の成立要件や対象となる“業務”の範囲について、実例を交えてわかりやすく解説します。
威力業務妨害の法的な定義
刑法第234条では「威力を用いて人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められています。ここでいう“威力”とは、暴力的手段だけでなく、精神的威圧や嘘の情報による社会的混乱も含まれます。
たとえば、爆破予告や虚偽のクレーム電話、SNSでのデマ投稿による業務停止なども「威力」として認定される可能性があります。
「業務」とはどこまでを指すのか
法律上の「業務」とは、職業的に行われる継続的な行為を指します。会社の事務、店舗の営業、公共イベントの運営、スポーツ大会の開催などが該当します。
ポイントは、その行為が“業務として継続的に行われているかどうか”です。個人であっても、それが職業や事業である場合には対象になります。
スポーツの試合も対象になる?
スポーツ大会やコンサートなどのイベントも、主催者が業務として運営していれば業務妨害の対象となります。たとえば、野球場に侵入して試合を妨害した場合や、試合直前に爆破予告をして中止に追い込んだ場合などが該当します。
こうしたケースでは、プロスポーツや有料イベントである限り、「業務性」が認められるため、妨害行為があれば罪に問われる可能性が高くなります。
個人のプライベートは対象になる?
結論から言えば、個人の私的な活動(趣味や遊びなど)を妨害しても、原則として威力業務妨害罪は成立しません。ただし、その行為がフリーランスの仕事や副業など、報酬を伴う“業務”と認定されれば例外となる場合もあります。
例えば、YouTuberの撮影を妨害した行為が、彼の収益源に影響を及ぼすと判断されれば、「業務妨害」として立件される可能性もあります。
実例で見る成立・不成立のケース
- 成立する例:企業の問い合わせ窓口に執拗に無言電話をかけ続けた結果、業務が停止した。
- 成立しない例:近隣住民の家庭菜園にいたずらしても、それが収益目的でなければ業務妨害とはならない。
- グレーゾーン:副業で個人運営しているオンラインショップへの迷惑行為。規模や継続性によって判断が分かれる。
まとめ:成立には“威力”と“業務性”の両立が必要
威力業務妨害罪の成立には、「威力が行使されたこと」と「対象が業務であること」の2つが必要です。日常のトラブルがすぐに犯罪になるわけではありませんが、相手の活動が“業務”に該当するかを正しく理解しておくことが重要です。
意図しない行動が犯罪に発展しないためにも、妨害となる可能性のある言動には十分な注意を払いましょう。