飲食店や施設などで見かける手指消毒液。もしその中身が“消毒効果のない水道水”だったとしたら…。それが意図的な偽装だった場合、単なるマナー違反では済まされない深刻な法的責任を問われる可能性があります。
偽装表示がもたらす刑事責任とは?
本来、エタノールなどを用いた消毒液であるべきところを、水道水に入れ替えて「消毒液」として表示・提供する行為は、不正表示に該当します。
これにより、以下のような法律違反が成立する可能性があります。
- 不正競争防止法違反(第2条1項20号等)
- 景品表示法違反(優良誤認表示)
- 詐欺罪(刑法246条)
これらはいずれも故意が認められた場合に成立しうる犯罪であり、処罰対象となります。
消毒効果がなく、もし感染や食中毒が起きたら?
万一、偽の消毒液が原因で食中毒や感染症が発生した場合、衛生管理義務違反が問われる可能性があります。
これは食品衛生法違反に該当し、営業停止や行政指導、さらに損害賠償責任のリスクにも発展します。
“うっかり”では済まされないケースも
中には「知らずに水を補充していた」などのケースもありますが、それでも責任を免れることは困難です。
特に、明らかに消毒用アルコールでないことを認識していたにも関わらず提供していた場合は故意性が認められ、厳罰化の対象にもなりえます。
実際のトラブル事例
例えば、2020年には消毒液と偽って次亜塩素酸水を水で希釈しすぎた結果、感染予防効果がなかったとして消費者庁から景品表示法違反の警告を受けた事業者が報じられました。
また、飲食店で従業員が誤って水を“消毒液”と入れ替えてしまい、保健所から営業指導を受けたケースもあります。
問題を防ぐための正しい管理体制
トラブルを避けるためには、以下のような取り組みが有効です。
- 消毒液はメーカー表示のあるボトルを使用し、中身を入れ替えない
- 詰め替えが必要な場合は、補充時の手順を記録・管理
- 成分濃度のチェックや定期的な衛生管理指導
衛生用品も“食品衛生の一部”と認識することが大切です。
まとめ:誤表示は重い責任につながる
消毒液の誤表示や偽装は、営業の信頼性を著しく損ない、法的責任を問われる重大な問題です。
「バレなければ大丈夫」ではなく、日頃から適切な表示・管理を徹底し、食品衛生・感染症対策を万全にすることが、事業者としての信頼と法令順守を守る鍵となります。