遺言書を公正証書で作成し、銀行を遺言執行者に指定するケースは増えています。しかし、後から遺言執行者を変更したくなることもあります。本記事では、銀行との契約を解除する際のポイントや手数料、遺言書への影響を丁寧に解説します。
遺言執行者を銀行から変更したいときの基本手続き
まず、遺言執行者を変更する場合には、遺言書そのものの内容に関わるため、原則として新たに公正証書遺言を作成することが必要です。
銀行との間で遺言執行業務に関する契約を交わしている場合、その契約の解除も必要となり、契約解除の意思表示を文書で行います。銀行によっては書式が指定されていることもあります。
銀行との契約解除時の手数料は?
銀行ごとに異なりますが、一般的に契約解除に関する手数料は1万円〜5万円程度が多いです。たとえば、ある大手銀行では「遺言執行契約のキャンセルに3万円(税別)の手数料」と明記されています。
ただし契約が「履行前」(つまり実際に遺言執行が始まっていない段階)であれば、手数料がかからない、もしくはごく少額に抑えられている銀行もあります。詳細は契約書の「解除条項」や「規定」に明記されていることが多いため、確認しましょう。
遺言書そのものは無効になる?
遺言執行者を変更しても、遺言書そのものが無効になることはありません。ただし、「遺言執行者として○○銀行を指定する」と明記されている場合、その部分は無効または実行不可能になる可能性があります。
安全のためにも、新たに公証人役場で公正証書遺言を作成し直すのが最も確実な方法です。新しい遺言書には前回の遺言書を取り消す旨を明記しましょう。
実例:遺言執行者を変更したケース
ある60代男性が大手銀行に遺言執行を依頼していましたが、後に司法書士に変更することを決意。変更理由は「手数料の差」と「対応の柔軟さ」でした。銀行には文書で契約解除を申し出、3万円のキャンセル料を支払いました。
その後、新たに公正証書遺言を作成し、司法書士を遺言執行者に指定。手続きは1週間程度で完了し、費用は公証役場手数料込みで約6万円でした。
公正証書遺言の作成・修正方法
公正証書遺言は、全国の公証人役場で作成できます。新たに作成し直す場合は、原本は自動的に法務省の遺言書データベースに登録され、旧遺言は「最新の遺言が優先」される形になります。
修正だけでは済まない場合もあるので、慎重に新しい内容を整理したうえで、作り直すのが基本です。
まとめ
銀行を遺言執行者から外す際には、契約の解除と新しい遺言書の作成が必要になります。契約解除に関しては、手数料が発生する場合があるため、契約内容を確認しつつ、慎重に進めましょう。遺言の有効性を保ちつつ変更するには、信頼できる専門家への相談が安心です。