自己破産を検討する際、「浪費」とされる支出があると免責不許可になる可能性があると聞いて不安になる方も多いでしょう。特に精神的な疾患や治療を目的とした支出は、客観的に判断が難しく、手続き上の扱いにも悩むところです。この記事では、精神的な事情や高額な自費治療費、証明書類の不足といったケースに焦点をあて、自己破産の免責がどのように判断されるのかを丁寧に解説します。
自己破産における「浪費」とは何か?
破産法上の「浪費」とは、合理的な理由がなく支出を重ねて経済的に破綻することを意味します。たとえばギャンブルや過度なブランド購入、投機的な支出などが代表例です。しかし、浪費とされるかどうかは支出の目的や背景に照らして判断され、必ずしも高額であること自体が浪費と断定されるわけではありません。
精神疾患による支出や治療費も、その必要性や継続性、客観的な事情を丁寧に説明できるかが重要なポイントになります。
精神疾患による支出は浪費とされるのか?
精神的な病気に起因する浪費は、裁判所によって一定の理解が示されるケースもあります。実際に過去の事例でも、精神疾患が原因で判断力が著しく低下していた場合には「免責不許可事由には該当するが、裁量免責が認められる」という判断が下されることがあります。
たとえば、うつ病やパニック障害などで通常の判断ができず、心身の安定のために高額な自費治療に頼らざるを得なかった事情が丁寧に説明されれば、浪費として免責が拒否されるとは限りません。
証明書や領収書がない支出はどう扱われる?
支出を証明する領収書や契約書が揃っていることは理想的ですが、すべてが残っていない場合でも、弁護士と相談のうえでメモ・記憶・通帳の出金履歴などをもとに事情を丁寧に説明すれば受理されることもあります。
特に精神的に不安定な時期であったことを証明する診断書や通院履歴がある場合は、支出の合理性を主張しやすくなります。資料が不十分でも、事実を誠実に伝えることが大切です。
免責不許可事由があっても「裁量免責」がある
たとえ浪費と判断されても、最終的に「裁量免責」が認められる可能性があります。これは裁判所が「事情を考慮して免責を認めるかどうか」を判断する制度です。本人に反省が見られ、経済的再建に向けて真摯に取り組んでいることが示されれば、免責が認められる例は少なくありません。
過去の裁判例でも、「自己破産の直前まで治療や生活再建に向けた努力をしていたこと」が裁量免責の根拠となった事例があります。
配偶者の財産や連帯債務はどう影響する?
配偶者名義の財産(例:自宅マンション)がある場合、その所有状況やローンの契約内容に応じて、破産手続き上の扱いが変わります。ただし名義が完全に別であり、債務者本人の管理下にないことが明確であれば、原則として配偶者の財産が手続きに影響を及ぼすことは少ないとされます。
一方で、配偶者との共同債務や連帯保証がある場合には、双方の債務状況や返済能力が影響するため、弁護士と慎重に相談する必要があります。
弁護士費用が出せない場合の対応策
弁護士費用が支払えない場合でも、法テラスの「民事法律扶助制度」などを利用することで、費用の立替や分割払いが可能になることがあります。審査はありますが、生活困窮の事情があれば利用しやすく、精神的な負担を軽減する一助になります。
また、自己破産の相談は無料で受け付けている弁護士事務所も多数ありますので、早めに相談することが重要です。
まとめ:不安なときこそ専門家に相談を
精神疾患により苦しんできた中での高額な支出であっても、すべてが浪費と判断されるわけではありません。支出の理由や状況、反省と再起への意志を丁寧に示すことが、免責への第一歩となります。
困難な状況でも希望を失わず、まずは信頼できる弁護士に相談してみることをおすすめします。法律の専門家と一緒に、生活再建への第一歩を踏み出しましょう。