駅の階段で後ろから強い勢いでぶつかられた友人が捻挫と骨折の大怪我。相手が“つまずいて止まれず転倒し巻き込まれた”と説明していますが、その説明、本当に理解できるものでしょうか?この記事では、法律的視点と実例から「どこまで妥当か?」を検証します。
■ 不法行為責任(過失責任)の基本
民法709条に基づき、「故意または過失」によって他人に損害を与えた場合、損害賠償責任が生じます。階段では特に注意義務が求められます。止まれずに勢いのまま下まで進んだとすれば、過失の有無が重要になります:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
一方、安全配慮義務違反が認められるには、施設設置者の瑕疵や状況も問われますが、今回のような個人同士の事故では、主に相手方の過失が焦点となるでしょう。
■ 「止まれずに踊り場から転げ落ちた」釈明は成立しうる?
理論的には、つまずいた反動でバランスを失い、止めようとした足が滑り階段を勢いよく下ることもあり得ますが、数十段を勢いのまま転げ続ける説明は現実には疑問が残ります。
実際の裁判例では、被害者や加害者の説明が事故態様と合わない場合、信憑性が低いと判断されることが多く、「速度や勢いと傷害の程度が一致しない」として争点になることもあります:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
■ 実例からみる過失とその評価
飲食店やエスカレーター、階段など公共空間の転倒事故を巡り、施設管理者側の責任や過失割合が裁判で争われています。転倒原因や現場の状態によって、被害者にも一定の過失が認定されるケースが多くあります:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
個人間事故では施設の瑕疵は関係ないため、相手の注意義務違反だけが問題になりますが、説明が不自然だと過失の立証に不利になる恐れがあります。
■ 客観証拠がなくても争えるのか?
警察も駅員も目撃者を確認できない状況では、双方の証言がぶつかり合います。事故後の対応――謝罪や治療費負担の提案など――が情状に影響することはありますが、事実関係の信ぴょう性は別枠で検討されます。
証拠がない場合でも、傷害の程度や説明の一貫性、現場状況から総合判断されます。
■ 心理的なモヤモヤを軽くするためにできること
- 相手説明と怪我の状況・タイミングが一致するか整理
- 可能であれば近くにいた人の証言や防犯カメラの有無を確認
- 医師の診断書をもとに衝撃の方向や程度を検討
- 後々に備え、内容証明や記録(メール・時間・やり取り)を保管
■ まとめ
相手の「つまずいて止まれず転倒した」という説明は、理論上あり得るものの、数十段を止められないまま転がった説明には疑問が残ります。転倒事故の過失責任は民法に基づき、事故態様・状況・説明の信頼性で決まります。
心にモヤモヤがある場合は、記録の整理や第三者による証言・専門家相談を進め、納得できる形で補償交渉や調整を進めるのが良いでしょう。