高齢の家族が介護施設に入所している中で救急搬送され、その後お亡くなりになるという事態は、残された家族にとって深い悲しみと共に「本当に適切な対応がされていたのか」という疑問を残すものです。特に、誤嚥性肺炎や尿路感染のような予防可能とも言える病状においては、施設や往診医の責任や過失が問われるケースもあります。本記事では、示談金の妥当性、カルテの開示の重要性、医師の対応の適切性など、判断に役立つ視点を詳しく解説します。
誤嚥性肺炎・尿路感染の進行と予防可能性
誤嚥性肺炎は、高齢者に多い肺炎の一種で、嚥下機能が低下することで唾液や食べ物が誤って肺に入ることで発症します。進行は緩やかなことが多く、食事中のむせ込みや息苦しさといった初期症状を見逃さず、早期に対応すれば悪化を防げます。
また、尿路感染症も衛生管理と定期的な観察で未然に防げる可能性のある疾患です。特にバルーンカテーテルなどを使用している場合は感染リスクが高いため、施設や往診医には注意義務があります。
示談金120万円の妥当性をどう判断するか
示談金の金額には、主に「治療費実費」「慰謝料」「看護費用」「葬儀費用の一部」などが含まれます。提示された120万円が入院費込みである場合、慰謝料としての割合はかなり低いと考えられます。相手側(施設・保険会社)は「過失が軽微だった」と主張している可能性が高いです。
一方、明確な過失が証明されていない状態での示談金は「訴訟リスクを避けるための最低限の和解案」であることも多く、納得できない場合は示談を急がず、弁護士に改めて交渉を依頼する価値があります。
カルテ開示と往診記録の信頼性
家族が求めた往診記録を、医師が開示しなかった点は非常に問題です。医師法24条および診療情報提供制度により、患者または遺族には一定の情報開示請求権があります。保険会社の顧問弁護士経由でしか開示されなかったこと自体、疑念を抱かせる対応です。
また、搬送直前の状態が明らかに悪化していたにも関わらず、「むせ込みに注意」といった入所当初と同じ文面しか記載されていない記録は、定型文だけの記録で実態を反映していない可能性があります。
往診医の対応に過失が認められるかの判断軸
医師の過失があったかどうかは、医療水準に照らして「診断・対応が妥当だったか」が問われます。誤嚥症状を訴えていたのに点滴や抗生物質の処方、再診依頼などが行われていない場合、注意義務違反にあたる可能性があります。
このような事例では、医療過誤に詳しい第三者医師や、法律事務所による医学的鑑定を取り入れることで、施設側・医師側に対する責任追及の材料が整います。
示談に応じる前に検討すべきポイント
- 診療記録や施設での観察記録を時系列で精査
- 提示された金額と、慰謝料・治療費・葬儀費などの実費とのバランス確認
- 過失の有無に関する第三者評価(鑑定)を検討
- 弁護士に示談額の妥当性と戦略を再相談
感情的な面もある中で冷静に判断するのは困難ですが、一度示談に応じると、その後の請求権は基本的に失われます。妥協できない点があるなら、納得いくまで交渉を続けることが重要です。
まとめ:不安があるなら示談前に第三者の意見を
施設での家族の死に対して「なぜもっと早く処置がなされなかったのか」という疑問は、ごく自然なものです。医療行為の是非、示談金の妥当性について悩んだときは、医療・法律の両面に詳しい弁護士へ再相談することが、後悔しない選択につながります。
時間の経過とともに資料が揃わなくなることもあるため、今後の方向性を見極めるには早めの行動が肝心です。