相続が発生したとき、相続人が必ずしも互いに親しい関係にあるとは限りません。被相続人の介護や日常生活の支援をしていた方が、不在のままの親戚と同じ取り分となることに違和感を覚えることは自然です。本記事では、疎遠な相続人がいる場合の遺産分割協議の進め方と、介護など貢献度の伝え方について解説します。
遺産分割協議のタイミングと流れ
相続人全員が確定した後、弁護士が各相続人に遺産の内容や協議の呼びかけを文書で通知します。これにより、協議が正式にスタートします。相手から返事が来た後、調整や交渉が本格化します。
この時点では、各相続人が「希望」や「意見」を伝えることが可能です。したがって、介護や身の回りの世話などの事情がある場合は、協議が始まる際にそれを明確に主張すべきです。
介護や代行の貢献は法的にどう扱われる?
相続法では「寄与分」という概念があります。寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に対して、その貢献分を加味して多めの取り分を認める制度です。
典型的な例としては、被相続人の介護、医療費の負担、財産管理代行などが該当します。あなたが長期間にわたって介護や代行をしてきた事実が証明できるなら、寄与分を主張する余地があります。
弁護士への伝え方と注意点
弁護士には、次のように具体的かつ簡潔に伝えるとよいでしょう。
- 「長年、○○(被相続人)の介護と通院代行を行っていました」
- 「その貢献を考慮した分割を希望しています」
- 「寄与分の主張を検討したいです」
このように、感情ではなく、具体的な行動と希望を明確に伝えることがポイントです。
少額相続であっても希望は伝えるべき?
「金額が少ないから主張しても意味がない」と考えがちですが、それは誤解です。少額であっても、心理的・実務的な負担があったことに対する正当な主張は可能です。また、他の相続人が柔軟な姿勢を取る可能性もあります。
事実を伝えずに協議を終えてしまうと、後で不満が残ることもあるため、例え少額であっても丁寧に交渉の場を活用することが重要です。
証拠や記録の用意があると説得力が増す
寄与分を主張する際は、次のような資料が有効です。
- 通院同行の記録(日記、交通費の記録など)
- 介護日誌
- 医療費を支払ったレシート
- 第三者(医師・看護師など)の証言や書類
これらは絶対に必要ではありませんが、あれば認定されやすくなります。
まとめ:冷静に、誠実に、正当な主張を
疎遠な相続人がいたとしても、法的には平等な立場です。しかし、あなたが介護や代行をしていたのであれば、それを正当に伝えることは間違いではありません。
弁護士には率直に「貢献度を考慮したい」と伝え、可能であれば資料も提示しましょう。少額相続であっても、気持ちの整理と納得のために主張を行うことは大切です。法的な制度をうまく活用し、後悔のない協議を目指しましょう。