親の介護に時間と労力を費やした家族にとって、遺産相続時に「公平な分配」は重要なテーマです。特に仕事を辞めてまで介護にあたった場合、その損失や貢献はどのように扱われるのでしょうか?本記事では、相続における「寄与分」という制度を中心に、実際に介護を行った家族が遺産を多く受け取れる可能性について詳しく解説します。
相続における「寄与分」とは?
寄与分とは、共同相続人の中で被相続人(この場合は母親)の財産の維持や増加、または介護などによる貢献があった場合、その相続人に特別な取り分を認める制度です。民法第904条の2に規定されています。
介護や看護、家業の手伝い、金銭的援助などが対象になり得ます。ただし、その寄与が相当と認められるには、無償で継続的に行われていたことが求められます。
実際に寄与分が認められるには?
裁判や遺産分割協議で寄与分を主張する場合、以下のような証拠が重要になります。
- 介護日誌や記録
- 介護に要した時間や頻度
- 収入減少の証明(退職届や雇用契約など)
- 同居や介護サービスの申請記録など
これらの証拠をもとに、「どれだけの経済的価値があったか」を合理的に示す必要があります。実務では、介護職の相場賃金を基に算出されるケースもあります。
兄弟間での合意と家庭裁判所の判断
相続人間で合意が取れれば、寄与分を考慮して任意の分配が可能です。しかし、合意が得られない場合には家庭裁判所に寄与分の調停や審判を申し立てる必要があります。
裁判所は、被相続人の介護状態、介護期間、経済的損失の程度などを考慮して寄与分を判断します。特に仕事を退職したようなケースでは、退職による損失も判断材料となることがありますが、すべてが認められるわけではありません。
「退職による損失」は寄与分になるのか?
退職して介護をした場合、その損失(得られたはずの収入)は直接的には寄与分として認定されにくい傾向があります。しかし、その分無償で介護を行っていた証拠としては有効です。
例えば、週5日、毎日6時間の介護を無償で続けた場合、ヘルパーの時給×時間×日数で金額換算するというように、労働価値として主張するのが一般的です。仮に年間120万円相当の介護貢献があれば、5年間で600万円などと主張できます。
まとめ|介護した人が適正に報われるために
介護によって生じた経済的損失や貢献が相続に反映されるには、「寄与分」の主張と証明がカギとなります。できる限り記録を残し、相続人全員での話し合いを大切にしましょう。
もし合意が難しい場合は、早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。特に高齢者の介護に専念したケースでは、法律上の権利をしっかりと認識しておくことが大切です。