近年、AI技術の進化により自動作曲が現実のものとなり、音楽制作のあり方が大きく変わりつつあります。特に既存の楽曲を学習データとして使用するAIモデルが注目されており、それに伴って著作権の問題も浮上しています。本記事では、日本におけるAI自動作曲と著作権の関係について、法律や判例、実例をもとにわかりやすく解説します。
AIが作る音楽は著作権の対象になるのか?
2024年現在、日本の著作権法では「著作物」は「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり、「人間によって創作されたこと」が前提とされています。そのため、AIが自動的に作成した楽曲には、原則として著作権が発生しないと解釈されています。
ただし、AIを使って人が最終的に選択・編集・調整などを行った場合、その人の創作性が認められれば「著作物」として保護される可能性があります。つまり、人間の関与の度合いがカギとなります。
学習に使われた曲の作曲者に権利はあるのか?
AIが学習に用いる楽曲(商業音楽や既存の著作物)は、基本的に著作権によって保護されています。しかし、日本では現行法上、「機械学習に必要な利用」であれば著作権者の許諾は不要とされており(著作権法第30条の4)、一定の範囲内で楽曲のデータを使うことは合法とされています。
たとえば、J-POPの曲を大量に学習させて、AIが新たなメロディを生成する場合、元曲と類似していなければ権利侵害には当たらないという見解が主流です。
著作権侵害となるケースとは?
AIが生成した楽曲が、学習元の曲と極めて似ていたり、メロディ・コード進行・歌詞などの一部が明らかに模倣されている場合は、著作権侵害として問題になる可能性があります。この場合、原作者はAI利用者や提供者に対して差止請求や損害賠償請求を行うことが可能です。
特に注意すべきは、商用利用する場合。YouTubeに投稿したり、音源として配信・販売したりすると、元曲の権利者から訴えられるリスクが高まります。
実例紹介:アメリカの「AI Drake事件」
2023年、アメリカでAIを使って人気ラッパー「Drake」の声と楽曲スタイルを模倣した曲がSNS上に投稿され、大きな議論を呼びました。ユニバーサル・ミュージックが削除申請を行ったことで、「AI模倣」と「著作権・肖像権・商標権」の複合的な問題が表面化しました。
日本でも同様の問題が将来的に起こる可能性があり、企業やクリエイターの間で倫理的・法的なガイドライン整備が進んでいます。
日本の著作権法改正と今後の動き
日本では現在、AIと著作権の関係について明確なガイドラインがない状況ですが、文化庁などが有識者会議を開き、法整備の議論を進めています。生成AIの利用と原作の関係性について、今後数年で新たなルールが定められる可能性があります。
また、JASRACやNexToneといった著作権管理団体も、AIによる創作物をどのように取り扱うか検討を進めており、著作権料徴収などの枠組みが将来的に拡充される見込みです。
まとめ:AIによる音楽と著作権は今後も進化が必要
AIによる音楽生成は便利で革新的な技術ですが、著作権とのバランスを取るためには慎重な運用が求められます。現時点では、学習に使うデータは合法であっても、生成された音楽が既存曲と類似する場合は注意が必要です。
将来的に著作権法がAI時代に合わせて再設計される可能性も高く、クリエイター・開発者・ユーザーは最新の動向を注視することが重要です。