企業における総合窓口を担う事務員の役割は、単なる電話取次ぎを超えた高度な判断を求められる場面も多々あります。特に社員個人宛ての私的な電話対応には、個人情報保護の観点や業務上のリスクも関わってくるため、慎重な対応が求められます。この記事では、社員個人宛ての私的な電話への対応方針と、適切な断り方について実務的に解説します。
社員個人宛の私的電話は「個人情報」に該当する
社員の在籍有無や勤務先情報は、個人情報保護法において「個人情報」として保護される対象です。したがって、本人の同意なく第三者へ在籍状況などを伝えることは法的にも不適切です。
とくに、名前を名乗らず、要件も明かさない相手からの問い合わせに対しては、いかなる情報であっても伝えるべきではありません。これは会社としてのリスク回避と社員の安全保護のためにも重要です。
しつこい電話への対応方針
私的な目的で繰り返される架電は、業務妨害に該当する可能性もあります。相手が要件を明かさず、名前も名乗らない場合は、次のような方針を徹底しましょう。
- 原則として個人に関する情報はお伝えしない
- 対応を一律にして社内で統一する(例:「全社員共通の対応方針です」)
- あまりにしつこい場合は通話記録の保存や警察相談を検討する
私的な関係(不倫関係や金銭トラブルなど)が背景にある場合は、社員本人を守る意味でも、情報開示には絶対に応じないことが肝要です。
実際の対応例:断り文句のテンプレート
事務員としての対応には、冷静かつ丁寧な言葉遣いが求められます。以下に、実際に使える断り文句の例を紹介します。
「申し訳ありませんが、当社では社員に関する情報は一切お答えしておりません。ご理解をお願いいたします。」
さらに繰り返される場合は。
「社内規定により、個人に関するお問い合わせには対応できかねます。同様のご連絡が続く場合、記録の上、必要な対応を取らせていただくことがあります。」
あくまで「会社の方針」として話すことで、個人の判断ではないことを強調できます。
実例:上手な対応を行った企業事務所のケース
ある建設会社では、毎週のようにある社員宛の私的な電話が入ってきていました。その都度応対していた事務員が、社内規定として「第三者からの個人宛電話には一切応じない」ルールを整備し、電話応対マニュアルに明記。社内全体でも統一対応が徹底された結果、私的な架電は大幅に減少しました。
このように、社内ルールとして明文化しておくことで、事務員個人への負担軽減と、業務の効率化にもつながります。
もしもトラブルに発展したら?
電話の内容が悪質だったり、嫌がらせやストーカー行為と見なされる場合は、警察の生活安全課や、会社の顧問弁護士に相談することも視野に入れましょう。
通話記録が残っていれば、それ自体が証拠として役立ちます。また、職場環境保全の観点からも、社内コンプライアンス窓口などに報告しておくことが重要です。
まとめ:個人宛の電話には一律対応と社内方針の整備を
社員宛の私的な電話対応は、事務職にとって悩ましい問題ですが、法令順守と社員保護の観点から、一貫した対応方針を徹底することが大切です。断る際も、丁寧で明確な言葉を使い、必要であれば記録や報告を残すことで、自身と会社を守る行動につながります。