家族との関係が悪化し、精神的・身体的な安全を確保するために法的措置を検討される方が増えています。特に親との関係に悩み、「接近禁止命令」を申立てたいと考えている方にとって、自分が現在住んでいる家の名義が親になっている場合、そのまま住み続けられるかは非常に重要な問題です。本記事では、民事保全法に基づく接近禁止命令の仕組みと、親名義の家に住み続けられるかどうかを、法律的な観点から丁寧に解説します。
接近禁止命令とは?
接近禁止命令は、民事保全法や配偶者暴力防止法(DV防止法)などに基づいて発令される命令で、加害者が一定の距離以上に近づくことを禁止する措置です。家庭裁判所への申し立てが必要で、被害の具体的な証拠や事情を提出することが求められます。
この命令は、被害者の身体・自由・生活の平穏を保護することを目的としており、接近禁止、電話・メールなどの連絡の禁止、周囲の者への接触禁止などが含まれることもあります。
接近禁止命令と居住権の関係
たとえ住居の名義が加害者側(たとえば親)であっても、一定の期間以上住み続けている場合、居住権や占有権が認められる可能性があります。特に20年以上継続して住んでいる場合、その居住実態は強い法的保護を受けることがあります。
また、接近禁止命令そのものは「加害者が近づかないこと」を命じるものであり、「申立人が家を出て行く義務」を課すものではありません。
親名義の家でも住み続けられる可能性
不動産の名義人である親が所有権を有していたとしても、申立人が長年にわたり「居住実態」を持っていた場合、簡単には退去させることはできません。たとえば、以下のような状況は法的保護の対象になる可能性があります:
- 住所を移して生活拠点としている
- 電気・ガス・水道などを契約・使用している
- 家具や荷物を設置し、長期間住んでいる
これに加えて、家庭裁判所に「退去強制の必要性がない」と判断されれば、住み続ける権利を実質的に保護されることになります。
注意点:所有者側が明け渡し請求をしてくる場合
ただし、親が自分の名義の家に他人が住んでいる状態を容認できないとし、明け渡し訴訟を提起してきた場合、法廷での争いになる可能性があります。この場合には、賃貸契約の有無・同意の履歴・居住実態・生活の必要性などが重要な判断材料となります。
可能であれば、弁護士など専門家の助言を受けながら、今後の対応や住居の確保についても計画を立てておくことが安全です。
弁護士のサポートを受けるメリット
親族間トラブル、特に精神的・身体的な暴力を伴うものは、感情が絡みやすく、話し合いでの解決が難しいケースも少なくありません。接近禁止命令の申し立てや居住権の保全に強い弁護士を見つけ、法的に正しい手続きを踏むことが、長期的に安全かつ安定した生活を得るための近道です。
法テラス(日本司法支援センター)などでは、一定条件を満たせば無料で法律相談を受けることも可能です。
まとめ:接近禁止命令を申請しても、必ずしも家を出ていく必要はない
接近禁止命令を申し立てたからといって、自分が今住んでいる家をすぐに出ていく義務が生じるわけではありません。長期にわたって住み続けた事実と居住実態は、法的にも重要な保護対象となります。まずは法的な支援を受け、安全と生活の両立を図るための対策を講じましょう。