刑事司法の現場において、再犯率の高さは重要な課題とされており、特に窃盗と薬物犯罪は「再犯の常習化」が深刻視されています。今回は、それぞれの犯罪の再犯傾向とその背景にある要因を分析し、社会復帰の課題についても考察します。
統計で見る窃盗と薬物の再犯率
法務省の犯罪白書(令和5年版)によると、窃盗犯の再犯率は約48%、覚醒剤取締法違反などの薬物犯罪は約60%に達しています。特に薬物については再犯者率が常に高く、初犯であっても再犯のリスクが極めて高いといわれています。
これに対し窃盗は、生活苦や依存性のない物欲型、あるいは常習者による職業的犯行など動機が多岐にわたる分、再犯理由にも多様性があります。
薬物犯罪が再犯率が高い理由
覚醒剤や麻薬は強い依存性を持ち、身体的・精神的に使用をやめることが難しいとされます。刑罰よりも医療的なアプローチが必要なケースが多く、刑務所を出たあとでも再使用に至りやすいのが現実です。
また、薬物使用に伴う人間関係や生活環境の再構築が難しく、支援がなければ再び薬物に頼ってしまうという構造的な要因があります。
窃盗犯罪の再犯の背景
窃盗の再犯には、経済的困窮や社会的孤立が影響しているケースが多く見られます。特に高齢者や生活保護受給者に再犯者が多く、万引きなど軽微な犯罪を繰り返す傾向もあります。
一方で、薬物のような生理的依存はないため、環境の改善によって再犯を防ぎやすい面もあると指摘されています。
執行猶予と再犯の関係
初犯の場合、執行猶予が付されることが多いですが、執行猶予中の再犯はそのまま実刑に直結します。特に薬物事犯では猶予中の再使用が多く、裁判官も再犯リスクを重く見る傾向があります。
窃盗も執行猶予中の再犯が多いものの、同種の軽微な犯行である場合には情状酌量の余地もあるケースも見られます。
再犯防止のための支援と課題
薬物依存の場合は「ダルク」などの回復支援施設の存在が重要です。また、医療的治療と社会的サポートが連携して行われる必要があります。
窃盗については、福祉的支援や住居・仕事の確保など、生活基盤の安定が再犯防止のカギを握っています。
まとめ
統計上では薬物犯罪のほうが再犯率が高いことが明らかですが、いずれの犯罪も背後にある社会的要因が大きく影響しています。単に数字だけで比較するのではなく、依存性や生活環境、支援の有無といった多角的な視点で再犯を防ぐ努力が求められます。
社会全体での理解と支援の仕組みづくりこそが、再犯のない未来に繋がる第一歩となるでしょう。