相続放棄を検討する際、「一部だけ財産を受け取りたい」「生前に土地を移したい」という悩みを抱える方は少なくありません。特に農地や古家付きの不動産など、資産価値は低くても手間や固定資産税のかかる財産については、慎重に判断することが大切です。本記事では、生前贈与や相続放棄にまつわるよくある疑問を法的な観点からわかりやすく解説します。
相続放棄とは?法的な基本と注意点
相続放棄とは、相続人がすべての相続財産(プラスもマイナスも)を受け取らないという選択です。これを家庭裁判所に申し出ることで、初めから相続人でなかったことになります。
注意点として、一部だけ相続放棄することはできません。たとえば、農地だけもらって、家屋は放棄したいということはできず、相続するか、すべて放棄するかの二択になります。
生前贈与なら財産の一部だけ所有できる
親が存命であれば、生前贈与により特定の財産だけを譲り受けることが可能です。たとえば農地や宅地の一部など、必要な範囲だけを贈与してもらうことで、将来の相続放棄との整合性を取ることができます。
ただし、生前贈与には贈与税の課税対象となるリスクがあります。年間110万円以下であれば非課税ですが、それを超える場合は贈与税の申告が必要です。農地の場合は「農地法」による許可も必要になる場合があるため、事前の調査と手続きが重要です。
相続放棄を予定していても生前に金銭を受け取れるか?
生前に親の所有する農地を売却し、その代金を子の口座に預けるというケースでは、贈与とみなされる可能性があります。これは法的に可能ですが、明確な贈与意思の記録(メモや契約書など)がある方がトラブルを防ぎます。
ただし、被相続人の死亡後に相続財産に手を付けてしまうと、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。葬儀費用や整理費用に充てる目的であっても「相続の単純承認」とみなされることがあるため、注意が必要です。
実際の活用例:農地だけを贈与して相続は放棄したケース
たとえば、農業を継いでいる長男が、親の農地を生前に贈与され、残りの家屋や借金などの財産は他の兄弟とともに相続放棄したケースがあります。この場合、生前贈与が完了していれば、放棄した後の財産とは別物として扱われるため、問題になりません。
また、売却代金を親から明確な贈与として子に渡していた場合、相続放棄の影響を受けません。ただし、その時点で贈与税の申告をしていることが前提となります。
トラブルを防ぐための3つのポイント
- 生前贈与をする場合は贈与契約書を作成しておく
- 農地の贈与には農地法の許可が必要な場合がある
- 親の死後に財産を使うと相続放棄できなくなる可能性がある
これらを理解しておけば、将来の相続においても安心して対応ができます。
まとめ:事前の準備が相続トラブルを回避する鍵
相続放棄を検討している場合でも、生前贈与で一部の土地や資産を取得することは可能です。ただし、贈与税や農地法、相続手続きのルールなどを十分に理解し、専門家に相談することを強くおすすめします。
相続や贈与の準備は早めに、正しい知識と段取りで進めていくことが大切です。