外食中に「思ったメニューがなかった」などの理由で、注文せずに退店することは決して珍しいことではありません。しかし、店舗によってはこれに対して強く反応するケースもあります。とあるラーメン店では「メニューだけ見て帰るのは営業妨害」とまで言われたという声も。本記事では、飲食店におけるメニュー閲覧後の退店が法律的に問題になるのか、また、店舗側とトラブルにならないための対処法について詳しく解説します。
飲食店でメニューを見て注文せずに出る行為は違法なのか?
結論から言えば、飲食店に入りメニューを見て退店すること自体は違法ではありません。日本の法律において、注文を強制する法的拘束力はなく、店に入っても契約(注文・購入)を交わす義務は存在しません。
したがって、料理が決まらなかった、想定していたメニューがなかったなどの理由で店を出ることは、消費者の自由とされる範囲内です。
営業妨害になるケースとならないケースの違い
「営業妨害」という言葉は法律上では名誉毀損や信用毀損を伴う行為に該当することが多く、単に「入店して退店する」だけでは通常該当しません。
ただし、以下のような悪質な行為を繰り返した場合には、営業妨害として扱われる可能性もゼロではありません。
- 何度も入退店を繰り返し、他の客の迷惑になるような行動
- 口コミサイトなどで事実無根の誹謗中傷を投稿する行為
- 大声を出す、店舗設備を無断で撮影するなどの妨害行為
単発で丁寧に謝罪した上での退店に対して「営業妨害だ」「警察に被害届を出す」などと主張するのは、法律的には過剰な対応と言えます。
実際に「被害届」が受理される可能性は?
警察に「被害届を出す」と脅されたとしても、それが必ずしも受理されるとは限りません。被害届は、実際に何らかの法益(財産、名誉など)に損害が生じていると判断された場合に受理されます。
メニューを見て帰るというだけの行動に関しては、財産的損害や社会的信用の低下が明確にあるとは認められにくいため、被害届が受理され、刑事事件に発展する可能性は極めて低いと考えられます。
また、店主が「顧問弁護士がそう言っている」と主張する場合もありますが、顧問弁護士の意見がそのまま法的拘束力を持つわけではありません。
飲食店とのトラブルを避けるためのコミュニケーション術
トラブルを未然に防ぐためには、以下のようなポイントに注意することが有効です。
- 入店時に「メニューを見て決めたい」と一言伝える
- 退店時は「お目当ての料理がなかったので、また来ます」と丁寧に声をかける
- 「すみません、今日は遠慮します」など感情を逆なでしない表現を心がける
店側にルールが掲示されていても、客がそれに気づかないこともあります。トラブルを避けるには、お互いの立場を尊重し合う姿勢が大切です。
店側のルールはどこまで正当化されるのか?
飲食店が独自のルールを掲示すること自体は違法ではありませんが、その内容があまりにも理不尽である場合、公序良俗に反するものとして法的な効力を否定される可能性があります。
「メニュー閲覧のみでの退店禁止」や「防犯カメラで監視中」「被害届を出す」などの過度な警告文が入口に貼られていた場合でも、それが必ずしも法的拘束力を持つわけではありません。
ルールが過剰で不快に感じるようであれば、別の店を選ぶのもひとつの賢明な判断です。
まとめ:消費者の権利と円滑な関係づくりのために
飲食店に入ってメニューを見ただけで退店する行為は、法的には違法でも営業妨害でもありません。ただし、店舗によっては独自のルールを強く主張するところもあるため、対話や丁寧な態度がトラブル回避に役立ちます。
不当な対応を受けた場合には、消費者センターなどに相談することも可能です。お客様であると同時に、店舗側にも配慮を示すことが、お互いにとって気持ちの良い関係を築くカギとなります。