駐車場での接触事故は、静止している車への接触というシンプルな構図であるにもかかわらず、その後の補償交渉でトラブルになるケースも多く見られます。特に、すでに傷があった箇所に再度接触があった場合、修理費用の負担や交換の必要性を巡って相手方との認識にズレが生じることがあります。
駐車場での接触事故における過失割合の基本
今回のように、被害車両が完全に静止していて、加害車両が駐車中に接触した場合は、原則として加害者側の過失は10:0となります。このような状況では、動いていない被害車側に責任が問われることはほとんどありません。
よって、加害者は損害を全額負担する責任があり、その補償範囲は事故により発生した損害に限られます。
バンパーの交換は妥当か?既存の傷がある場合の判断基準
事故によって傷ついたバンパーが、以前からの傷もある状態だったとしても、新たな損傷が発生した以上、その損傷に対する補償は必要です。
ただし、既存の傷と今回の傷が明確に判別できる場合、保険会社や加害者側が「部分修理で済む」と主張することは珍しくありません。実際には、傷の場所や程度によってはバンパー全体の交換が必要なケースも多く、プロの車両修理業者が「交換が妥当」と判断した場合、その見積もりには一定の正当性があります。
加害者が保険を使いたくないと言う場合の対応
加害者が「保険を使いたくない」と言うケースもありますが、被害者としてはそれに応じる義務はありません。相手が任意保険に加入している場合は、「保険会社を通して対応してください」と伝えるのが安全です。
仮に相手が現金での示談を希望しても、全額をしっかり支払ってくれなかったり、途中で連絡が取れなくなったりするリスクがあります。そのため、後からトラブルにならないよう、保険対応を強く推奨します。
修理費用の妥当性を裏付けるためのポイント
修理費用が妥当かどうかを説明するには、複数の見積書を取るのが効果的です。1社のみの見積もりでは「高すぎる」と言われる可能性もあるため、信頼できる別の業者でも見積もりを依頼し、相場を提示すると説得力が増します。
また、見積書の中に「既存の傷と今回の損傷の違い」が記載されていると、相手や保険会社への説明がスムーズになります。
法的にはどうなる?民法上の損害賠償請求の考え方
民法では、故意・過失により他人に損害を与えた場合、その損害を原状回復させる義務があります(民法709条)。
つまり、事故で新たに傷がついたのであれば、その分の損害賠償を請求する権利があります。
ただし「既に存在していた傷によって部品全体の交換が必要になった」と加害者側が主張する場合は、一部減額や交渉の余地が生まれることもあります。その際は、法テラスや弁護士への相談も有効です。
まとめ:過失10:0なら冷静に対処すれば大丈夫
今回のような状況では、被害者側が「おかしい」と思う必要はまったくありません。過失割合が10:0であれば、加害者側が修理費用を全額負担すべきですし、プロの業者が「交換が必要」と判断したのであれば、それに従って進めて問題ありません。
重要なのは、感情的にならず、証拠(見積書・写真・修理業者の説明)をそろえて、正当に請求を進めることです。最終的に保険対応になれば、保険会社同士で解決してくれるため、スムーズな解決が期待できます。