道端に成っている柿や栗、梅などの果実を見かけたとき、「誰のものでもないし、少しくらいなら採ってもいいのでは?」と思った経験があるかもしれません。しかし、その行為が法律上どう扱われるのか、意外と知られていません。本記事では、こうした場面での法律的な判断と注意点をわかりやすく解説します。
「道端の樹の実」は本当に“誰のものでもない”のか?
一見すると公共のスペースに生えているように見える樹木でも、多くは市区町村などの公共団体、あるいは近隣の個人が所有しているケースが大半です。
たとえば、道路沿いの街路樹や緑地帯にある果実は、原則としてその土地の管理者(自治体等)に所有権があります。つまり、勝手に採取することは「他人の所有物を無断で持ち出す行為」とみなされる可能性があります。
刑法上の観点:窃盗罪にあたる可能性
刑法235条では、「他人の財物を窃取した者は、窃盗罪として10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。実際に「道端の柿を採ったことで警察に注意された」「近所の栗を拾っていたら通報された」などの事例もあります。
たとえ1つ2つであっても、所有権がある以上は“窃盗”とされ得るという点を理解しておきましょう。
民法上の観点:不法行為や損害賠償請求の対象にも
刑法以外にも、民法709条により「不法行為による損害賠償責任」が発生する可能性があります。たとえば、「収穫を楽しみにしていた果実を勝手に採られた」として、精神的損害や収穫物の評価額を請求される例も報告されています。
これらの行為は単なるマナー違反にとどまらず、法律上の責任が生じることもある点に注意が必要です。
例外的に許される場合は?
・明確に「ご自由にお取りください」と掲示がある場合
・地域の収穫イベントや地元ルールで認められている場合
・所有者の許可を得ている場合
こうしたケースでは法的な問題は生じにくいですが、それでも周囲への配慮やごみの後始末などはマナーとして求められます。
実際のトラブル事例
・東京23区内で、公園に成っていた柿を高枝ばさみで採取していた男性が通報され、警察の事情聴取を受けたケース。自治体の管理する樹木だったため、厳重注意に。
・ある地方の住宅街で、道路脇の栗の木から実を拾っていた人が防犯カメラで記録され、地元住民が掲示で「採取禁止」を呼びかけたケースも。
まとめ:道端の実は「拾う前に確認」がマナーと法律を守るカギ
・道端の果実も、原則的に誰かの所有物
・無断で採取すれば窃盗罪や不法行為になる可能性あり
・どうしても気になる場合は所有者や自治体に確認を
・許可がない限り、勝手に採ることは避けるのがベスト
ほんの少しの行動でも、法律の対象となる可能性があるからこそ、「ちょっとだけ…」という軽い気持ちには慎重になることが大切です。