中古車を購入した直後に重大な不具合が見つかった場合、購入者には法的に保護される権利があります。2020年の民法改正により、これまでの「瑕疵担保責任」に代わって「契約不適合責任」が導入されました。この記事では、契約不適合責任とは何か、どのような場合に適用されるのか、実際のトラブル事例と共に解説していきます。
契約不適合責任とは?|民法改正によるポイント
契約不適合責任とは、売買契約において売主が引き渡した目的物が「契約の内容に適合しない」場合に負う責任です。民法第562条〜第564条に規定されており、2020年の改正後は「隠れた瑕疵」か否かにかかわらず、不適合があれば追及が可能となりました。
たとえば「エンジンやクラッチなど主要部分に異常がない車両を引き渡す」という合意に対し、明らかに異常がある車が納車された場合、売主に責任を問うことができます。
納車直後の不具合は契約不適合に該当するか
エンジンオイルの油圧異常やクラッチペダルの戻り不良といった症状は、明らかに通常の使用に支障をきたす不具合です。納車から1時間以内の発生であれば、購入者に起因する可能性は極めて低く、販売店側の説明義務違反や整備不良が疑われます。
こうした不具合が事前に告知されておらず、購入者が通常期待する機能や安全性を満たさない場合には、契約不適合責任に基づく修補請求や代金減額請求、さらには契約解除も視野に入ります。
販売店とのやり取りと記録の重要性
トラブルが発生した際には、販売店とのやり取りはできる限り文書やメール、LINEなど証拠が残る方法で行いましょう。電話の内容も日時や要点をメモし、録音が可能なら記録しておくのが理想です。
今回のように「油圧は正常の範囲内」「クラッチは慣れれば大丈夫」といった曖昧な返答があった場合も、やり取りを残しておくことで後の交渉や法的対応時に有効な証拠になります。
契約解除・損害賠償を求める流れと注意点
契約不適合責任を主張する際、まずは修理(追完)を求め、それが不可能または合理的期間内にされない場合に契約解除や代金の減額、損害賠償請求へと進みます。
重要なのは、不具合の発覚からできるだけ早期に販売店へ通知することです。通知義務を怠ると、責任追及が認められないリスクがあります。
実際に起きた類似事例とその結果
過去の判例では、中古車購入後にクラッチ故障やオイル漏れが発覚し、裁判所が「契約の内容に適合しない」と認定したケースがあります。こうした事例では、販売店が修理費用の全額を負担したり、契約解除に応じる判断が下されています。
例えば、大阪地裁平成30年の判例では、「納車後すぐの重大な故障は、販売者に契約不適合責任がある」とされ、販売店に対して修理費と代車費用の支払いが命じられました。
まとめ|泣き寝入りせず正当な権利を主張しよう
中古車購入後に深刻な不具合が発覚した場合は、契約不適合責任に基づいて販売店に対応を求めることができます。特に納車直後であれば、「契約の内容に適合していない」という主張は十分成立する可能性があります。
「記録の保存」「通知の迅速化」「交渉の冷静さ」が重要です。必要に応じて消費者センターや弁護士への相談も視野に入れ、正当な権利をしっかりと行使しましょう。