「自転車は原則車道を走行すべき」というルールに対して、安全性を疑問視する声があるのは確かです。万が一の事故が起きたとき、誰が責任を負うのかという問題は、交通法規を理解するうえで非常に重要です。この記事では、自転車の車道通行の背景や事故時の責任の所在について、法的観点と実務を交えて解説します。
なぜ自転車は車道通行が原則とされているのか
自転車は日本の法律上、「軽車両」に分類されます。道路交通法第17条では、軽車両は「車道の左側を通行しなければならない」と定められています。
このルールは、歩道を歩く歩行者との衝突を防ぎ、歩行者の安全を優先するために設けられています。また、自動車と同じ方向で車道を通行することで、交通の流れを統一し予測可能な動きを保つことにもつながります。
例外として歩道を走れるケースもある
例外的に、自転車が歩道を通行できるケースも存在します。たとえば以下のような場合です。
- 「自転車通行可」の標識がある歩道
- 運転者が13歳未満、70歳以上、身体の不自由な方である場合
- 道路工事や交通量が多く、やむを得ないと警察署が判断した場合
こうした例外が設けられているのは、状況に応じて自転車の安全を守る必要があるからです。
事故時の責任は誰にあるのか?
自転車が車道を走行中に後方から自動車に追突され死亡した場合、基本的には自動車運転者の「前方不注意」や「安全確認義務違反」などが問われます。刑事責任・民事責任ともに、自動車側に問われるケースが大半です。
ただし、自転車側にも不注意(無灯火、急な進路変更、逆走など)があった場合、過失相殺の対象になることがあります。例えば、最高裁判例でも「事故の発生に寄与した行動」に応じて損害賠償額が調整されることがあります。
法制度を作った警察に責任はあるのか?
交通ルールは警察庁が主導して定めますが、実際には内閣・国会の立法過程を経て制定・改正されています。市民の安全を前提に制度設計されており、制度に起因する事故が起きたとしても、原則として「制度設計者の責任」が問われることはありません。
つまり、個別の事故に対して責任を負うのはあくまで当事者(運転者・被害者)であり、制度全体に対する責任追及は司法判断よりも政治・行政の領域になります。
実際の事故例と判例から読み解く
例えば、都内で起きた事例で、自転車が左端を走行中、後方からの右折車に巻き込まれ死亡した事故では、自動車側に安全確認義務違反が認定されました。自転車が法令通り走行していたことが評価された形です。
このように、法に従って走行していた自転車が被害者になる場合、責任の所在は基本的に加害車両側になります。正しいルールを理解して走ることが、自転車利用者自身の身を守る最善策なのです。
まとめ:ルールを知り、安全な通行を心がけることが重要
自転車が車道を通ることは、道路交通法に基づく正当なルールです。そして、事故が起きた場合の責任は、その時の状況や各当事者の行動によって左右されます。警察や制度設計者に法的責任が及ぶことは極めて稀であり、私たち一人ひとりが正しく交通ルールを理解し、実行することが最も重要なのです。
自転車を安全に利用するためにも、車道走行の原則や例外、事故時の責任構造をしっかり把握しておきましょう。