自己破産と予備費の扱い|管財事件における注意点と調査対象になる可能性を解説

自己破産の手続きにおいて、破産管財人が選任されるケースでは、申立人の財産状況が詳細に調査されることになります。その際、「予備費(生活防衛資金)」として現金を手元に残しておいた場合、それが問題視されるのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。本記事では、破産手続きにおける予備費の扱いと、破産管財人の視点から見た注意点について詳しく解説します。

そもそも予備費とは何か?

ここでいう予備費とは、生活費以外に万が一の出費(病気、子どもの学校関連費、失業時の支出など)に備えるために現金で確保しておく資金を指します。一般の家計では合理的な行動ですが、破産手続きではこの「手元現金」も調査対象となり得ます

たとえば、破産申立前に数十万円以上を現金で引き出してタンス預金として確保したような場合は、破産管財人に「意図的な隠匿」と見なされる可能性があります。

管財人の役割と財産調査の基本

管財事件(少額管財を含む)では、破産管財人は申立人の財産と支出の全体像を把握し、債権者への公平な配当を行う役割を担っています。そのため、預貯金、現金、保険解約返戻金、仮想通貨、電子マネーなども調査対象になります。

財産の一部を意図的に除外しようとした場合は、免責不許可事由(破産法第252条)に該当するリスクがあるため、極めて注意が必要です。

生活に必要な費用と「過剰な予備費」の線引き

破産法では、申立人の最低限の生活を守るために必要な資金(例:1〜2か月分の生活費程度)であれば、自由財産として扱われる可能性があります。ただし、その判断は管財人と裁判所に委ねられます。

たとえば以下のような資金は一定の理解が得られやすいケースです。

  • 病院での高額診療が予定されている
  • 子どもの入学金や教材費が控えている
  • 一時的な収入断絶に備える最低限の生活費(1〜2か月分)

一方で、明確な理由なく50万円以上の現金を「予備費」として別口座に保管していた場合などは、管財人から説明を求められたり、否認対象とされる可能性があります。

事前にやるべき対応と相談のすすめ

予備費を持つこと自体が違法ではありませんが、申立書類に正確に記載し、弁護士や司法書士を通じて管財人に説明できるようにしておくことが重要です。隠そうとする姿勢が不信を招き、免責不許可事由として認定されるリスクが高まります。

実際の破産申立てでは、「現金として◯万円保持」と明記することも多く、正直な申告と合理的な説明があれば大きな問題に発展しないこともあります。

まとめ:予備費は正当な理由と申告があれば原則問題なし、隠匿は絶対に避けるべき

自己破産において予備費を持つこと自体は違法ではありませんが、金額・目的・申告の有無によって管財人から指摘される可能性があります。特に高額な現金の引き出しや、複数口座での分散保有は誤解を招きやすいため注意が必要です。

少しでも不安がある場合は、破産申立てを依頼する専門家(弁護士・司法書士)に正直に相談し、適切な形で説明を整えることが最善の対応といえるでしょう。

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