近年、労働者のキャッシュフロー改善を目的として「給与前払い制度」を導入する企業が増えています。一方で、前払いのたびに高額な利息を請求されるケースも存在し、法的な問題に発展することもあります。この記事では、「給与前払いに対する利息5%」というケースをもとに、違法性の有無や根拠となる法律について詳しく解説します。
給与前払い制度とは?仕組みの基本
給与前払い制度とは、労働者が働いた分の給与を、所定の支払日より前に一部受け取ることができる仕組みです。これは「給与の前借り」とは異なり、すでに働いた分に対して支払うため、貸金ではなく労働の対価という位置づけになります。
企業によっては、提携業者を通じて導入しているケースもあり、その際は「手数料」や「システム利用料」が発生する場合もあります。
前払い利息5%は合法か?利息制限法と労基法の観点から
結論から言えば、労働者が働いた分の給与に対して利息や手数料を差し引くことには法的な制限があります。
労働基準法第24条では、「賃金は全額を支払わなければならない」と定められており、正当な理由なく手数料や利息として給与から控除することは違法と判断される可能性があります。
また、利息制限法では、金銭貸付の上限利率が年15%(元本10万円以上100万円未満)とされており、月5%(年60%相当)は明らかにこれを超えるため、仮に貸付とみなしても違法となります。
具体例で見る:30万円の前払いに対する1万5000円の利息
質問にあった「30万円の前払いで1万5000円(5%)の利息」が発生する場合、これは事実上の高金利貸付かつ、労働法違反の疑いが極めて濃厚です。
30万円×5%=1万5000円を月額で徴収する行為は、年換算で60%もの利率になり、消費者金融などの規制をはるかに上回る超高利になります。
会社側がよく言う「手数料」との違いに注意
一部企業では「利息」ではなく「システム利用料」や「事務手数料」と称して天引きする場合があります。しかし、これらも労働者に実質的負担を強いている場合、違法と判断される可能性があります。
特に、給与の一部から天引きされている場合には、労使協定(36協定など)による明確な同意が必要で、これがない限りは違法です。
違法性がある場合の対処方法
このような高額利息が発生している場合、労働基準監督署への相談が最も有効です。地域の労基署では匿名相談も受け付けており、必要に応じて会社に対して是正勧告が出されることもあります。
また、法テラスや労働問題に強い弁護士に相談することで、未払い賃金請求や違法な控除の返還を求める法的措置も可能です。
まとめ:給与前払いに5%利息は原則違法の可能性が高い
働いた分の給与を前払いしてもらうこと自体に問題はありませんが、それに対して月5%という高額な利息を徴収することは、労働基準法や利息制限法に違反する可能性が極めて高いです。
不当な天引きや過大な手数料に心当たりがある場合は、早めに労基署や法律専門家へ相談することをおすすめします。労働者には正当な対価を受け取る権利があります。