身内が急な入院や死亡を迎えた場合、病院から突然医療費の支払いを求められることがあります。特に、保証人になっていないにもかかわらず請求書が届いたとき、戸惑いや疑問を抱く方は少なくありません。本記事では、法律上の支払い義務、生活保護との関係、そして実際に請求を受けた際の対処方法について解説します。
保証人でなければ医療費の支払い義務は原則なし
日本の民法上、医療費の支払い義務は治療を受けた本人か、保証契約を締結した人にのみ課されます。つまり、入院患者の親族であっても「保証人として書面を交わしていない限り」、支払い義務は原則として発生しません。
このため、疎遠だった親族が病院に呼び出され、請求されたとしても、それに応じる義務は法律上ありません。支払ってしまった場合でも、任意の支出とみなされることがあります。
生活保護受給中の医療費は原則公費負担
生活保護の受給が決定されると、「医療扶助」が適用され、原則として入院や治療費は公費負担になります。これにより、生活保護を受けていた期間の医療費は自己負担がゼロとなり、病院が患者や家族に直接請求することはありません。
ただし、生活保護の適用前に発生した医療費は、患者本人に請求される可能性があります。ですがその支払い能力がない場合、病院が未回収となるリスクを負うのが通常です。
「支払った」場合は返還請求できることも
親族としての情に動かされて医療費を支払ってしまった場合、そのお金を「病院に返還請求できるか」が問題になります。これは支払った時点の状況や、病院側が誤解を与えるような対応をしたかどうかによって変わります。
例えば「必ず支払ってもらう必要がある」と断定的に告げられて支払った場合、法的には不当利得や錯誤による返金請求が可能なケースもあります。一度、法律相談窓口(法テラスなど)に相談するのが良いでしょう。
誓約書の有無は重要なポイント
亡くなった親族本人が「診療費支払いの誓約書」にサインしていた場合、その債務は基本的に本人のものとされます。相続放棄をしていれば、相続人であってもこの債務を引き継ぐ必要はありません。
また、誓約書にあなた自身が署名していない場合、法的な拘束力は及びません。書類にサインした事実がないか、今一度確認しておきましょう。
今後の対処方法と相談先
現在すでに支払ってしまった金額がある場合や、請求が続いている場合は、以下の手順で対応しましょう。
- 病院に対し、法的な支払い義務があるか文書で確認を求める
- 弁護士または法テラスで無料相談を受ける
- 支払った分の返還を求める場合、証拠(領収書・請求書・病院とのやり取り記録)を整理する
- 相続放棄を考える場合は家庭裁判所へ申述(死亡を知ってから3ヶ月以内)
これらの手続きは一人で抱え込まず、専門機関に早めに相談することが、後々の精神的・金銭的負担を大きく軽減します。
まとめ:感情ではなく法的根拠で判断を
身内の死や突然の入院など、非常時には冷静な判断が難しいこともあります。しかし、保証人でない限り、医療費を支払う法的義務は基本的にありません。支払いを求められた場合は、まず契約内容と法律上の義務を確認し、安易に支払いに応じないことが大切です。
困ったときは、法テラスなど公的な無料相談機関を活用し、正当な方法で解決を目指しましょう。