高齢の親が通帳を親族以外の第三者に預けてしまうケースは珍しくありません。しかし、こうした行動は本人の善意や信頼関係から起きる反面、資産の管理リスクやトラブルの火種にもなり得ます。この記事では、通帳を「友人」などに預けてしまった場合にどのように対処すべきかを具体的に解説します。
高齢者が通帳を他人に預けてしまう背景
高齢者が通帳や印鑑を知人に預けてしまう理由としては、「信頼している」「判断力の低下」「身内より気兼ねない」といった心理的背景が挙げられます。
とくに施設入所前の準備や引っ越し、急な環境変化などで精神的に不安定になっていると、安易に第三者へ金銭管理を任せてしまうケースがあります。
親族が取るべき初期対応
まず行うべきは、事実関係の把握です。本人が誰に、いつ、どのような形で預けたのかを聞き取りましょう。重要なのは“争わず冷静に聞くこと”です。
名前だけでもわかれば、地域の知人や施設職員を通じて居場所を調べられることもあります。可能であれば、口座番号・通帳の銀行名を把握しておきましょう。
金融機関への連絡と手続き
次に、該当口座のある金融機関に相談を行います。本人確認書類を持参のうえ、以下のような対応が可能です。
- 通帳の再発行
- キャッシュカードの再発行・停止
- 不正引き出しの防止措置(パスワード変更など)
高齢者本人が同行できない場合でも、家族による代理手続きや委任状対応が可能なケースがあります。事前に銀行に電話して確認しておくとスムーズです。
警察・弁護士への相談も検討
通帳を預けた相手が不明確で、なおかつ返却の見込みがない場合は、民事・刑事の両面での対応を考えるべきです。
窃盗や横領の可能性がある場合、警察への相談も視野に入れてよいでしょう。弁護士に相談すれば、仮差押えや調停など法的手段もとれます。
成年後見制度の活用について
今回のように、本人の判断力がやや不安定な場合は、成年後見制度の利用も検討に値します。家庭裁判所で手続きを行い、家族や第三者が資産管理をサポートする法的枠組みです。
特に長期的に施設に入る予定であり、今後も金銭トラブルが懸念される場合には、有効な選択肢となります。
施設入所に必要な費用が用意できないときは
一時的に親族が立て替える場合でも、必ず支払いの証明(領収書や振込明細)を保管しておきましょう。将来、相続時などに費用負担の精算を行う際の根拠となります。
また市区町村の社会福祉課に相談すれば、生活保護や緊急支援制度の案内を受けられることもあります。
まとめ:感情的にならず、冷静な対処と記録を
通帳が第三者の手に渡ったと聞くと、不安と怒りが入り混じるのは当然の感情です。しかし、最も重要なのは「冷静な記録と行動」。
まず事実確認、次に銀行・警察・法律家など専門家への相談、必要であれば法的保護の手続きを取るという順序で、確実に対応していきましょう。