夫婦間であっても、お金の貸し借りが発生した場合、金額や状況によっては贈与とみなされ、思わぬ税負担が生じることがあります。特に現金での高額な貸付は記録が残りにくく、贈与税のリスクが高まるため注意が必要です。今回は、妻から1800万円を現金で借りたケースを例に、贈与税回避のポイントと金銭消費貸借契約書の実効性について解説します。
高額な現金借入は「贈与」と誤解されやすい
国税庁では、夫婦・親子などの近親者間における金銭授受について、形式的な契約書や利息の設定がない場合、「贈与」とみなす傾向があります。贈与と認定されると、年間110万円を超える部分に贈与税が課されるため注意が必要です。
今回のように1800万円という高額な貸付は、貸借契約の実体が証明できなければ、税務署から贈与とみなされるリスクが大きいです。
金銭消費貸借契約書の有効性とポイント
贈与とみなされないためには、金銭消費貸借契約書(借用書)を作成することが必須です。記載内容には以下の要素が重要です。
- 借入金額と借入日
- 利息の設定(年利〇%など)
- 返済方法と期限(例:定年退職時に一括返済)
- 署名・捺印
今回のケースでは、返済期限と利息付きでの一括返済を明記しているため、形式上の問題は少ないと考えられます。ただし、現金の授受記録や使用履歴がない点が弱点となる可能性があります。
現金でのやり取りは要注意!証拠不十分になる恐れ
銀行振込など記録が残る手段と異なり、現金での貸し借りは証拠が乏しく、税務調査の際に実体を証明しにくくなります。通帳や領収書など記録が残る手段でのやり取りが原則推奨されます。
既に現金での受け渡しを終えてしまった場合は、契約書に借入事実を明記し、公証役場での確定日付を取得しておくことで信頼性を補強できます。
将来的な返済実績も重要なポイント
贈与とみなされないためには、実際の返済が行われることも非常に重要です。契約書に記載されている通りに、退職金などから一括で返済されれば、税務署に対して「借入である」という主張に現実性が伴います。
そのためにも、返済時の資金出所(通帳や明細)を記録に残すよう準備しておきましょう。
まとめ:契約書+実体+証拠の3点で贈与認定を回避しよう
夫婦間のお金の貸し借りであっても、税務署は形式だけでなく「実態」を厳しくチェックしています。金銭消費貸借契約書を作成したことは正しい第一歩ですが、現金での授受や記録のなさは弱点です。
今後は返済実績を通帳などで明確に残すことを心がけ、必要に応じて税理士に相談しながら、贈与税のリスクを未然に防ぎましょう。