親との関係がこじれたり、兄弟間の不公平な財産分配に不満を持つ方は少なくありません。とくに「兄だけが生前贈与を受けている」「私には一切援助がない」という状況に直面すると、法的にどうにかできないかと考える方も多いでしょう。この記事では、「生前贈与は請求できるのか?」という疑問を軸に、相続・贈与に関する法的ポイントを解説します。
生前贈与は「請求できる権利」ではない
まず最も重要な点として、生前贈与は贈与者(この場合は親)の意思によって行われるものであり、法的に子どもが「贈与しろ」と請求することはできません。
つまり、父親が生前に兄にだけ財産を与え、他の子どもには何もしなかったとしても、それだけで法的に贈与の取り消しや自分への贈与を強制することはできないのです。
生前贈与が不公平でも争えるのは「相続開始後」
ただし、相続が発生した後(つまり父が亡くなった後)には「特別受益」や「遺留分侵害額請求」という形で生前贈与の不公平を争うことが可能です。
特別受益とは、相続人の一部が他の相続人よりも明らかに有利な生前贈与や遺贈を受けていた場合、それを相続分に加味して調整する制度です。
また、法定相続人には最低限の取り分「遺留分」が認められており、これを侵害されていた場合には他の相続人に対し、金銭での請求(遺留分侵害額請求)ができます。
弁護士に相談することでできること
生前贈与そのものを取り戻すことは難しいですが、以下のような対応は弁護士を通じて検討可能です。
- 将来の相続に向けた証拠保全(兄への贈与の証拠など)
- 遺留分侵害に備えた調査・準備
- 家族との交渉代行・書面作成
相続財産や過去の贈与状況を調べ、相続時に争点となり得る事実関係を今から整理しておくことが、将来のトラブル回避につながります。
父親の態度や暴言の法的評価
質問のように「死んだらいい」などの暴言や家からの拒絶があったとしても、民事的には明確な損害がなければ慰謝料請求は非常に難しいのが現実です。
ただし、内容や頻度、周囲の証言などによっては、家庭内ハラスメントや精神的被害として問題化する可能性もゼロではありません。証拠があれば弁護士に相談する価値はあります。
どうしても納得できない場合の選択肢
「父の葬儀にも出ない」「家に戻るつもりもない」という気持ちが強い場合でも、将来の相続に対しては冷静に法的手続きの準備を進めておくことが大切です。
たとえば、・兄にだけ高額の現金贈与があった
・土地や不動産が一方的に名義変更されているといった事実があるならば、後の相続で「特別受益の持ち戻し」や「遺留分請求」を行う根拠になり得ます。
弁護士を通じて内容証明を送る、預金履歴を調査するなど、できることは少なくありません。
まとめ|生前贈与の請求はできないが、将来に備えて動くことは可能
生前贈与は本人の意思によるものであり、兄にだけ贈与されたとしても「今すぐ請求する」ことはできません。
ただし、相続発生後には贈与の不公平を調整する制度があり、法的な対応も可能です。今のうちから証拠を整理し、弁護士と連携して備えておくことが、不当な相続を防ぐための第一歩になります。