自動車業界において、納期遅延や契約条件を巡って顧客とのトラブルが発生することは少なくありません。特に、新車納車が長期化するケースでは「言った・言わない」の応酬や、サービスの強要などが問題となることがあります。
▼ハラスメントの種類と該当する可能性
このような顧客からの過度な要求や暴言、無理なサービスの強要は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当する可能性があります。カスハラとは、顧客が立場の優位性を利用して、従業員に対して不当な要求や威圧的な言動を行う行為のことです。
例えば「ナビやETCをサービスしろ」「納期が長すぎるから補償しろ」といった要求が執拗であり、業務妨害や精神的負担を伴う場合には、十分にカスハラと認められる余地があります。
▼民事・刑事上の法的対応は可能か
カスハラがエスカレートし、脅迫や強要、名誉毀損などに該当する場合は、刑法上の犯罪となる可能性があります。例えば「サービスしなければネットに悪評を書き込む」といった発言は、名誉毀損や業務妨害に該当することもあります。
また、民事上では不当な要求に対して損害賠償請求や、接触禁止を求める仮処分などの法的措置を講じることも検討できます。
▼企業としての対策と予防策
最近ではカスハラ対策マニュアルを整備する企業も増えており、「一線を超えた要求には毅然と断る」という姿勢が重要です。記録を取る、対応は複数名で行う、事前に契約内容や納期を明示するなどの対応が推奨されます。
また、国や自治体、業界団体も「カスタマーハラスメント対策ガイドライン」を策定しており、従業員の保護に向けた啓発も進んでいます。
▼実際の現場でのトラブル事例
あるディーラーでは、納期遅延に対して顧客が「営業マンを土下座させないと気が済まない」と発言し、営業所長が対応したケースがありました。このような事例でも録音や証拠保全を徹底し、法務部と連携して毅然と対応した結果、トラブルは沈静化しました。
また、販売成績に影響することを恐れて泣き寝入りするケースも見られますが、適切な対処が企業文化の健全性にも繋がります。
▼まとめ:現場と法の両輪で対応を
納期説明を事前にしていたにも関わらず、35万円相当の無償サービスを求めるような要求は明らかに過剰であり、カスハラの一種と考えられます。記録を取り、社内で共有し、必要に応じて法的措置を検討することが重要です。
顧客対応の最前線に立つ担当者の負担軽減のためにも、企業としてのルール整備と教育が急務と言えるでしょう。