近年、相続後に管理されない空き家が社会問題化しています。特に庭木や雑草の放置が原因で近隣住民に迷惑をかけているケースも少なくありません。この記事では、空き家の庭木が越境した場合の法的な扱いや、近隣住民が取れる具体的な対応策についてわかりやすく解説します。
相続後に管理されない空き家のリスクとは
相続された家屋が管理されずに放置されると、建物の劣化や庭木・雑草の繁茂により周囲に悪影響を及ぼす可能性があります。特に敷地外に伸びた枝や雑草は、通行の妨げや隣地の日照・景観問題にもつながります。
相続人が所有者である以上、建物や土地に関する管理責任も生じます。放置が続けば、地方自治体から指導や行政代執行の対象となることもあります。
民法上の越境枝・根の取り扱い
民法233条では、隣接地に越境した「枝」は、原則として所有者に切除請求しなければなりません。勝手に切ることは違法となる可能性があります。
一方で、越境した「根」は、例外的に自己で切除できるとされています。ただし、私的に判断するのではなく、事前に文書等で通知・交渉するのが望ましいです。
まずは所有者に対し内容証明で通知を
隣家の庭木によって被害が発生している場合は、まず所有者に対して正式に通知しましょう。可能であれば内容証明郵便を利用すると、記録が残るためトラブル回避につながります。
通知文には「いつ頃から越境しているのか」「どのような被害があるのか」「○月○日までに対応してほしい」などを具体的に記載しましょう。
対応がない場合は自治体に相談
通知後も改善が見られない場合、次に取るべきステップは市区町村の空家対策担当部署への相談です。自治体によっては「空き家等対策条例」に基づき、勧告・指導・代執行などが行われることもあります。
また、建物の老朽化が著しい場合は「特定空家」として認定され、固定資産税の優遇措置が解除されることもあります。
場合によっては弁護士相談も検討
個人での対応が困難な場合や、所有者との連絡が取れない場合は、弁護士相談サービスを活用するのも選択肢の一つです。法的措置(民事調停など)に進むかどうかの判断材料にもなります。
費用が気になる方は、法テラスなどの無料法律相談を活用しても良いでしょう。
過去の事例:近隣住民による解決成功例
実際に筆者の地域では、隣接する空き家の庭木によって電線に干渉した事例がありました。複数の近隣住民が署名の上で自治体に申立てを行った結果、行政指導が入り、所有者が業者に依頼して剪定を行いました。
このように、個人での対応が難しくても、地域全体で動くことが効果的な場合もあります。
まとめ:冷静な対応と法的知識が鍵
空き家の庭木問題は、感情的にならずに冷静に対処することが重要です。まずは所有者に連絡を取り、改善が見られない場合は法的手段や行政相談を検討しましょう。
地域全体の安全と景観を守るためにも、適切な手続きと情報収集をもとに行動を起こすことが求められます。