養育費が未払いの場合に強制執行は可能?公正証書の内容が重要な理由と手続きの進め方

養育費の支払いが滞った場合、子どもと養育者の生活を守るために法的手段を講じる必要があります。中でも強制執行は有効な手段の一つですが、実行にはいくつかの法的条件や手続きがあります。本記事では、公正証書がある場合における強制執行の可否や具体的な手順、注意点などを解説します。

公正証書に強制執行認諾文言があれば差し押さえ可能

養育費に関する公正証書に「強制執行認諾条項」が記載されていれば、裁判を経ずにすぐに強制執行を申し立てることが可能です。この文言は「支払いを怠った場合は、強制執行に服することを承諾する」といった内容が一般的です。

この条項が記載されていない場合は、公正証書自体は証拠能力がありますが、すぐに差し押さえができる「債務名義」としては使用できません。代わりに家庭裁判所で「履行勧告」や「履行命令」などの手続きを経て、最終的に債務名義を得る流れになります。

強制執行のための必要書類

強制執行を申し立てるには以下の書類が必要です。

  • 債務名義(強制執行認諾付き公正証書など)
  • 養育費未払いの証拠(通帳の写しなど)
  • 債務者の勤務先情報または預金口座情報
  • 住民票や戸籍附票(債務者の現住所が必要な場合)

特に差し押さえ対象が給与や預金の場合は、勤務先名や口座情報を正確に把握しておくことが重要です。

履行勧告・履行命令とは?

公正証書に強制執行認諾条項がない場合は、まず家庭裁判所に「履行勧告」を申し立てます。これは裁判所から債務者に対して支払いを促す通知です。

勧告に従わない場合は「履行命令」を申し立て、命令違反により5万円以下の過料が科される可能性があります。これにより心理的な圧力をかけ、支払いを促すことが期待されます。

実際に強制執行する場合の流れ

必要な債務名義が整った場合、地方裁判所に「強制執行申立書」を提出します。差し押さえの対象が給与であれば、債務者の勤務先に送達され、給料から養育費相当分が差し引かれるようになります。

金融機関口座の差し押さえも可能ですが、口座の特定と預金の有無がカギになります。

注意点と実務上のコツ

強制執行は確実な情報が命です。勤務先や預金口座を正確に把握していないと執行自体が難しくなります。また、弁護士に相談することで手続きの不備や無駄な時間を防ぐことができます。

また、差し押さえ対象が自営業者や無職の場合、給与差し押さえは困難となるため、他のアプローチ(財産開示請求など)も検討する必要があります。

まとめ:公正証書の内容確認と冷静な法的対応を

養育費の未払いが発生した場合、まずは公正証書に強制執行認諾条項があるかを確認しましょう。条項があれば速やかに強制執行の手続きに進めますし、ない場合でも履行命令などの段階を踏むことで対応可能です。

感情的にならず、法的に正当な手順を踏んで、必要に応じて弁護士や法テラスのサポートも活用しながら子どもの権利を守っていきましょう。

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