企業が配達スタッフを雇用する際、その安全運転能力は業務の継続可否に大きな影響を与えます。特に原付バイクを使う業務では、事故歴は重大な経営リスクとなり得ます。本記事では、2年弱で8回の事故を起こしたケースを例に、運転適性の判断基準と法的リスク、対策について解説します。
2年で8回の事故は「普通」ではない
一般的な業務用原付ドライバーの年間事故件数は、統計上「年0.2〜0.5件」が標準とされており、2年間で8回は明らかに異常値です。
事故の内訳が「前方不注意での追突」「単独転倒」など基本的な運転ミスの場合、技能や注意力に問題がある可能性が高いと判断されます。
企業に課せられる安全配慮義務と責任
雇用主には「安全配慮義務（労働契約法第5条）」があり、適性を欠く従業員を放置したまま重大事故が発生すれば、会社に損害賠償や刑事責任が問われる可能性があります。
たとえば、重大人身事故が発生した場合、使用者責任（民法715条）により企業が被害者に賠償責任を負うことになります。保険適用外の損害が発生した場合は直接会社の損失にもつながります。
外国人留学生スタッフの管理上の注意点
外国人留学生を雇用する場合は、文化や運転マナーの違い、交通法規の理解度の差を前提に、より丁寧な教育と評価プロセスが求められます。
特に以下のような対応が有効です。
- 運転前の適性チェック（模擬運転・講習）
- 定期的な安全講習・評価制度
- 事故発生後の再研修義務
再発防止のための社内制度づくり
事故の多い従業員に対しては、「一定回数の事故で就業制限」「再研修受講義務」「人事面談」といった制度の整備が有効です。
さらに、ドラレコによる運転診断や、安全運転評価制度（ポイント制）なども有効なリスク管理手段です。
実例：同様のケースでの企業判断
ある飲食チェーンでは、1年間で3回事故を起こした配達員に対して、出勤停止と再講習を義務付け、再発時は配置転換または解雇の方針を取りました。
別のケースでは、社内で事故分析報告書を作成し、類似事故の傾向からマニュアルを見直した事例もあります。
まとめ：事故歴から見る継続雇用の是非
・2年で8回の事故は業務上著しく不適切で「普通」ではない。
・企業は適性を見極める責任と、再発防止策の導入が不可欠。
・外国人雇用者には追加的な教育と評価体制が必要。
・リスクが継続する場合、配置転換や契約更新見直しも合理的。
適性に疑問があるままの継続雇用は、企業リスクを高めるだけでなく、他の従業員の安全や士気にも影響を与える可能性があります。明確な判断基準と制度整備こそが、将来的なトラブルを回避する鍵となるでしょう。