住宅の新築やリフォームにおいて、「排水設備」の適切な施工は住環境の快適さや衛生面に大きく影響します。中でも「ダブルトラップ(トラップの二重設置)」は、誤って施工されることもあるトラブルの一つ。本記事では、ダブルトラップが違法かどうかという疑問について、法的な根拠や技術基準を踏まえて詳しく解説します。
ダブルトラップとは?その問題点を理解する
排水トラップとは、排水管からの臭気や害虫の侵入を防ぐための装置です。通常、排水口ごとに1つ設けられています。ところが、同一排水系統内に複数のトラップが設置されると、空気の流れが悪くなり、排水不良やサイホン現象による封水切れを引き起こすおそれがあります。
例えば、洗面台にトラップがあるのに床下排水枡にもトラップがある場合などが典型です。これが「ダブルトラップ(重複トラップ)」の状態であり、設計ミスまたは認識不足で施工されることがあります。
建築基準法と通達におけるダブルトラップの扱い
建築基準法の直接的な条文には「ダブルトラップの禁止」という文言は明記されていませんが、関連する省令や技術的基準、国土交通省の通達などで「避けるべき施工」とされています。
代表的なのが「排水設備の技術基準に関する告示」や地方自治体の排水設備基準で、「一系統の排水管には1つのトラップとすること」といった内容が規定されています。つまり、技術基準違反=事実上の法令違反と評価されるケースもあるのです。
違法性はあるのか?施工業者の責任を問えるか
「違法かどうか」という観点では、必ずしも刑事罰や行政処分の対象になるとは限りません。ただし、技術基準を満たしていない施工であるならば、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を問える可能性があります。
特に住宅瑕疵担保履行法の対象となる新築住宅では、「構造耐力上主要な部分」や「雨水の侵入を防止する部分」に直接関係しないとしても、居住性に重大な影響を与える設備不良として業者に補修を求めることが現実的に可能です。
トラブルになった場合の対応方法
まずは、設計図面や排水ルート図をもとに専門家(建築士や第三者住宅検査機関)へ現場調査を依頼するのが有効です。報告書に「ダブルトラップの不適切性」が明記されれば、説得力ある証拠として施工業者との交渉がしやすくなります。
また、都道府県や市町村の「建築指導課」や「排水設備指定工事店協会」などへの相談もおすすめです。場合によっては行政指導を通じて、是正を促すことも可能です。
実例:ダブルトラップが原因で排水詰まりが頻発
実際にあった事例では、新築一戸建てで「洗濯機の排水が何度も逆流する」というトラブルが発生。調査の結果、床下の排水管に意図せずトラップが二重に設置されていたことが原因でした。
このケースでは、建設会社が無償で修正工事を行い、以後のトラブルは解消されました。被害者側が地域の建築指導課に相談したことが、業者側の対応を後押ししたとされています。
まとめ:ダブルトラップは回避すべき施工。業者とのやり取りは冷静に
ダブルトラップは居住者の生活に不具合をもたらす恐れがある施工ミスです。建築基準法の条文上は直接的な違法とまでは言えないケースもありますが、技術基準や行政通達に反していれば十分に是正要求が可能です。
違和感を感じたら早めに専門家や行政に相談し、冷静に記録を残しながら対応しましょう。