外国と日本で犯罪を犯した場合の法的扱いとは?国際的な刑事管轄権の基礎知識

グローバル化が進む現代では、ある人物が複数の国で犯罪行為を行うケースも珍しくありません。とくに「外国で犯罪を犯し、その後日本で犯罪を犯した」場合、どの国の法律で裁かれるのかという点は法的にも複雑な問題を含みます。本記事では、こうしたケースにおける刑事責任の所在や適用される法律について解説します。

犯罪地の原則:基本は犯行地の法律で裁かれる

刑事責任は通常、「犯罪地法主義」に基づきます。つまり、犯罪が発生した国の法律に従って処罰されるという原則です。たとえば外国で窃盗や暴行などを行った場合、その国の刑法により起訴・裁判・刑罰が科されるのが一般的です。

ただし、日本人が外国で犯罪を犯した場合、帰国後にその行為について日本で再度裁かれることがあるのかどうか、という点は少し事情が異なります。

日本の刑法における「国外犯」処罰の考え方

日本の刑法第3条〜第5条では、「国外犯」に関する規定が存在します。原則として、日本の刑法は日本国内で発生した犯罪に適用されますが、次のような例外もあります。

  • 刑法第3条:日本国外で日本国民が一定の重大犯罪(例えば殺人・強盗など)を犯した場合、日本の刑法で処罰できる
  • 刑法第4条:外国人が外国で日本人に対して特定の犯罪を犯した場合、日本の刑法で処罰できることがある

つまり、日本人が外国で一定の重大犯罪を行った場合には、帰国後でも日本の裁判所で裁かれる可能性があります。

実例:二重処罰や引き渡し条約との関係

仮に外国で犯罪が発覚し、現地で逮捕・起訴されてすでに刑罰を受けていた場合、その犯罪について日本で再度裁かれることは、通例としてはありません。これは「一事不再理(同一の犯罪について二度裁かれない)」という刑事訴訟の基本原則に基づきます。

ただし、犯罪の重大性外交関係により、例外的に再度の立件が検討されるケースもあります。特に国際刑事事件などでは、各国間の「犯罪人引き渡し条約」や「相互刑事共助条約」が適用され、当事国同士で裁判管轄の調整が行われることがあります。

日本帰国後に国内で犯罪を犯した場合

帰国後に日本で別の犯罪を犯した場合は、その行為について日本の刑法で処罰されます。つまり、外国での犯罪と日本での犯罪は別個に扱われるのが原則です。前歴や刑務歴が日本の刑に影響することはありますが、処罰そのものは各犯罪に対して個別に行われます。

例:
・アメリカで麻薬密売をして帰国後、日本で窃盗事件を起こした場合
⇒麻薬事件はアメリカ法により処罰、日本では窃盗罪により処罰される。

まとめ:各国の法制度と協定により異なる

外国と日本で犯罪を犯した場合の処罰の可否や範囲は、各国の法制度、国際条約、日本の刑法上の「国外犯」規定に基づいて判断されます。日本国民であるか否か、犯罪の種類や重大性、現地での処罰の有無などにより大きく異なります。

複数国にまたがる刑事事件は、外務省の海外邦人保護制度や、法務省インターポールなど国際的な枠組みにも関係するため、詳細な判断は法律専門家への相談をおすすめします。

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