日本の損害賠償金はなぜ欧米より低い?高額事例と制度の違いを解説

日本と欧米諸国では損害賠償金の水準に大きな違いがあり、特にアメリカでは「懲罰的損害賠償」があるため高額な支払い命令が目立ちます。一方、日本では原則として「実損主義」が採用されており、被害者が実際に被った損害に対してのみ賠償が認められます。

日本での高額損害賠償の代表例

実例として、2004年に起きたJR福知山線脱線事故では、民事訴訟において被害者遺族に対し数千万円単位の損害賠償が認定されましたが、アメリカの同種事故と比較すると金額は控えめです。

また、医療過誤事件では東京女子医大事件などで1億円を超える賠償命令が出されたこともありますが、これもアメリカの数十億円規模のケースと比べると見劣りします。

懲罰的損害賠償がない日本の制度的特徴

日本の民法では、被害回復を目的とした賠償が基本であり、違法行為に対する制裁の意味を持つ「懲罰的損害賠償」は導入されていません。この点がアメリカとの最大の違いです。

そのため、加害者の資産状況や企業規模にかかわらず、損害額の根拠が明確でなければ高額請求が通らないという傾向があります。

行政による賠償金の大きな支払い事例

行政が関与する高額賠償の事例では、ハンセン病国家賠償訴訟が挙げられます。これは国の隔離政策が違憲とされ、元患者らに1人あたり800万円前後、総額13億円以上の賠償が認定されました。

また、冤罪事件に関する再審無罪後の賠償請求でも、無実を証明された人に対して国家が数千万円の賠償を支払う例が複数あります。

他国との比較:日本・中国・韓国との違い

中国や韓国でも日本同様、懲罰的損害賠償は限定的にしか認められていません。制度面での類似性があるため、賠償金額も同程度にとどまる傾向にあります。

一方、欧米では陪審員制度や原告弁護士への成功報酬型報酬システムが浸透しており、賠償金が天文学的数字になることも珍しくありません。

今後の制度改革と議論

日本でも一部で「懲罰的損害賠償」の導入を求める声が上がっていますが、慎重論も根強く、現時点では制度化の見通しは不透明です。

しかし、企業の不正や人権侵害への抑止力強化という観点から、より実効性ある救済制度が必要との議論は今後も続くでしょう。

まとめ:日本の損害賠償の実情と限界

日本では高額賠償が出ることはあるものの、欧米のような懲罰目的の制度がないため、金額に上限があるのが現実です。被害者保護の観点からは、今後の法制度の見直しと充実が期待されています。

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