交通事故による損害について裁判を起こし、加害者に対して勝訴判決が下された場合でも、それだけで自動的に賠償金が支払われるわけではありません。この記事では、判決後に被害者が取るべき実務的な対応や注意点を、法律の流れに沿ってわかりやすく説明します。
勝訴判決の意味と確定までの流れ
判決が出ても、控訴期間(通常は14日間)を経てはじめて「確定判決」となります。加害者側が控訴しない場合、または控訴が棄却された場合に確定となり、その後に強制執行が可能となります。
控訴がなければ、判決日から2週間後に裁判所から「判決確定証明書」を取得することができます。これが今後の手続きにおける重要書類となります。
任意での支払い請求と交渉
まずは判決確定後に、加害者本人またはその保険会社へ任意での支払いを請求します。内容証明郵便で送ることで、意思表示の証拠を残すことが可能です。
この段階で支払いが行われれば、強制執行をせずに済みます。特に自賠責保険や任意保険が関与している場合、支払いがスムーズに進む可能性があります。
支払いがない場合の強制執行手続き
加害者が判決通りに賠償金を支払わない場合は、強制執行(差押え)の手続きに移行します。具体的には、以下のような流れになります。
- 判決謄本+確定証明書を取得
- 執行文の付与(裁判所に請求)
- 債務者の財産調査(勤務先、口座、不動産など)
- 差押命令申立て(地方裁判所へ)
- 預金口座や給与などの差押え
弁護士を通じて行うと手続きがスムーズですが、費用がかかるため、金額や加害者の資力によって検討が必要です。
判決内容に保険会社が応じないケース
加害者が任意保険に加入していても、裁判の内容によっては保険金の支払い対象外とされる場合があります。たとえば、飲酒運転や無保険運転が関与している場合は保険会社が支払いを拒否することがあります。
この場合、加害者本人への請求となり、資力がない場合は実質的に回収不能となるケースもあります。こうしたリスクを見越して、訴訟前から弁護士と協議しておくことが望ましいです。
賠償金が支払われたあとの対応
無事に賠償金が支払われた場合でも、後遺障害が残るようなケースでは継続的な通院や後遺障害等級の認定、追加賠償などの対応が必要なこともあります。
また、賠償金は一時所得に該当する可能性がありますが、原則として非課税です。ただし、遅延損害金は課税対象になるため、確定申告が必要な場合があります。
まとめ:判決後の対応も被害回復の大切な一歩
交通事故での勝訴判決が出たあとは、確定の確認→支払い請求→強制執行→回収確認という一連の流れを丁寧に踏むことが重要です。判決で終わりではなく、現実的な回収を行うには専門家の支援も視野に入れながら対応を進めましょう。