債務の返済トラブルに直面したとき、元金の支払いが完了しているからといって安心できるとは限りません。特に、遅延損害金が残っている場合でも、債権者が競売や訴訟を申し立てる可能性があるのをご存じでしょうか。本記事では、遅延損害金のみの未払い状態における法的措置の可能性と、それに対する実務的な対応策をわかりやすく解説します。
遅延損害金とは?その性質と法的意味
遅延損害金とは、債務者が返済期限を過ぎた場合に課されるペナルティ的な金銭で、元金とは別の法的債務として扱われます。通常、契約書や約款に基づいて年率14%などの高めの利率が設定されており、放置すると金額が膨れ上がるリスクもあります。
また、遅延損害金も立派な「債権」であるため、債権者はこれを根拠に法的措置を講じることが可能です。
遅延損害金だけでも競売や訴訟は可能なのか?
結論から言えば、遅延損害金のみの未払いでも、債権者は訴訟や競売の申し立てが可能です。特に、不動産に抵当権が設定されている場合、遅延損害金を理由に競売申立てが行われた判例も存在します。
例えば、住宅ローンの元金は完済したが、延滞利息が残っており、数十万円分の遅延損害金を理由に抵当権実行の訴えを提起されたケースもあります。
訴訟や競売の現実的なリスク
遅延損害金の金額が少額であれば、訴訟や競売には費用倒れの懸念があるため、債権者が躊躇することもあります。ただし、法的には「請求可能」な状況であるため、リスクはゼロではありません。
債権者が弁護士を代理人に立てて訴訟提起した場合、訴訟費用・弁護士費用も上乗せして請求されることがあるため、結果的に損害が大きくなる可能性があります。
実際に起こりうるケースと判例の紹介
判例の中には、「元金完済後に残った遅延損害金の未払いにより、不動産に設定された抵当権を根拠に競売申立てが認められた」例も見られます。東京地裁や大阪地裁では、遅延損害金の法的効力を債権と認め、債権回収手段としての法的措置を肯定した判決も存在します。
つまり、遅延損害金の未払いは「債務不履行」の一形態と見なされることがあるのです。
回避のためにできる具体的対策
- 話し合いによる和解:債権者と分割払い等の交渉をすることで、訴訟を回避できる可能性があります。
- 債務整理:任意整理などの手続で、遅延損害金の減額または免除を目指すことも可能です。
- 時効の確認:遅延損害金にも時効(原則5年)があるため、時効の援用ができるケースもあります。
まとめ:遅延損害金を軽視しない意識が重要
たとえ元金の支払いが完了していたとしても、遅延損害金の未払いを放置することにはリスクが伴います。訴訟や競売の可能性は現実的に存在するため、速やかな対応が求められます。
債権者との円滑な交渉、法的助言を受ける姿勢、時効の確認など、具体的な行動を起こすことが、リスクを最小限に抑える第一歩となるでしょう。